日本人の平均寿命は、男性80.75歳、女性86.99歳(2017年3月厚生労働省)になりました。80歳まで生きることは当たり前で、多くの人が100歳近くまで生きる時代です。60歳で定年退職となったとして、それから20年以上も人生が続きます。
ただ与えられた仕事をこなすだけのキャリアにおいては、残念ながら豊かな老後を送るだけの蓄財を望むべくもないのが現状です。早いうちに具体的な人生設計をしていきましょう。
これからの働き方を考える
これまで新入社員として組織の一員になれば、仕事をするために必要な知識や技術を会社が与えてくれました。会社が用意したプログラムに従い、経験を重ねていけば「昇進」「昇格」して仕事も職位も上がるシステムが存在していました。
既に何度もお伝えしていますが、会社に入ってしまえば「一生安泰」という時代は終わり、成果や結果を求められる時代に入っています。この時代の変化は、私たちの働き方を大きく左右するものです。与えられた仕事をただこなしているだけではなく、生産性、効率性、効果性を追い求めると同時に、新たな価値を生み出していくことが求められています。
このような変化は、私たちの働き方に大きな影響を与えているのではないでしょうか。まず、一社で勤め上げれば「役職」に就ける、年齢を重ねれば確実に給与が上がるといった暗黙の了解が失われました。その一方で、専門性を身につけて会社に依存しない働き方を選ぶ人たちが台頭しました。
次に、これまでは、決められたことを決められた通りにできる、ルールや規律を守りつつ、素早く正確に対応することを会社から期待されていました。ところが、これからは上司の知識や経験では知ることのできない現場や顧客の要求や変化をいち早く察知し、その要因を突き詰め、次の施策を展開することが期待されています。
ここまでみたように、これからの時代は私たち自身で働き方を選択できると同時に、組織からの期待値に迅速かつ的確に応えていくことが重要となります。
自律的に働くということ
私たちが働く環境の変化は、プラス面もあります。しかし、ここまで見てきたように、受け身で毎日を過ごす、あまりにも楽観的な姿勢でいると思いもよらない事態に陥る可能性が高まるでしょう。このような時代下で私たちは、「自分の身は自分で守る」観点を取り入れなければならないでしょう。
私たちに求められるのは、自分の能力を自分で高めていくという発想です。
能力を高める上で大切なことは、「仕事を通じて自分を高めていく」ことです。仕事に直結する資格を取れば、自分の能力が高まったと認識している方も多いかもしれません。しかし、資格を取得することはその仕事をするための前提条件が整えたと認識をした方がよいでしょう。組織からの期待値を考えて頂ければ分かるように、取得した資格をどのように活かすかがなにより重要になります。
つまり、能力を高めることは、社内外の誰かから“あなたの力”が必要だと言われることです。
前回のコラム(この会社にずっといることができますか?キャリアについて考えてみよう)で「自分なりのキャリアを築くためにすべきこと」でも書かせて頂きましたが、自分の仕事について現状をしっかりと把握すること、自分の仕事に対する価値観を明確にしておくことが必要です。
そして、将来どのように活躍していたいのかを描いてみましょう。その時、世の中はどのようになっているかを想定することができれば、これから高めていかなければならない能力がはっきりとしてくるでしょう。
自律的に働くということは、短期的な今の視点のみに左右されず、自分自身の職業人生を歩んでいくことです。経済的に自由であるということや一人でなんでもできるということではありません。自分なりの働く目的や仕事の意義を見出し、周囲からの支援や協力を取り付けながら組織や社会に貢献することです。
世代別のキャリア意識の持ち方
キャリアに対する考え方は、若手(20~30代)、中堅(40代)、シニア(50代)と世代によって変わってきます。それぞれの世代のあるべき意識の持ち方を検討していきましょう。
最近は、大学時代からキャリア教育を受けており、若手社員のキャリアへの関心はほかの世代より高いといえます。思い描いていた理想と現実が上手く結びつかないため、不安や悩みを抱えやすい時期ともいえます。実務経験を積む中で自分の能力の基礎を作ることが大切です。
ライフステージでも重要な時期を迎える40代は、今後のキャリアをどうするかを最も考えなければならない世代です。会社としては、まだまだフル稼働してもらいたいと思っている一方で、事業環境の変化に伴って求める人材も変化します。これまで培ってきた経験を生かしつつ、いくつかの考え得るキャリアのバリエーションに対応できるようにしましょう。
早期退職で悠々自適、社外出向でソフトランディングが定番だった50代。年金支給が65歳からとなり、平均寿命が延びている昨今では、早々に引退する訳にもいかなくなりました。また、会社の方でも人材不足や雇用延長の義務化によって、60歳を過ぎても働いてもらう必要が出てきました。
50歳になっても、まだまだ先がある、と思わなくてはいけなくなったのです。しかも、先々には現在の肩書とは違う働き方が求められます。将来的に起こる生活や仕事での変化に対応できるように、リアルな心構えと具体的な備えが必要です。
シニアの働き方のロールモデルになるのだと思うことが、いいモチベーションになるでしょう。これまでのキャリアに安住せず、どのように会社に貢献するのか、後進にどのようなことが残せるのかを考えていきましょう。