第94号:部門の業績を上げる上司の秘訣
「部門を成長させていくには、課長たちを育てなければいけないと思っています。部門目標を達成させていくには、各課の課題解決と課長たちの連携が必要だと考えています。ですから、彼らが対応できるようになるための仕掛けづくりをしています。」と企業で部門を束ねるトップが話してくださいました。
私たちは社員の成長を語る時、若手・中堅社員の底上げをイメージしてしまいがちです。社員の能力を底上げは必要ではありますが、彼らの成長よりもより経営に影響を与えるのは、経営者・管理職層の成長です。ところが、リーダーの成長を支える方法は、あまり語られることがありません。
日本企業では、新人や若手社員たちに教育機会が提供されますが、経営者・管理職層には滅多にありません。意識が高い人たちは、情報収集や学びの場に足を運んでいます。しかし、そうした場を活用するのは、ごく一部です。各人のリーダーとしての自分の能力をどのように捉えるのかは、さておき、組織がより発展していくには、現場の指揮官である管理・監督層の力が極めて重要です。
とある会社のA部長は、部下のミスや欠点をズバリと指摘していきます。そして、部下は自信を無くして退職を検討するようになり、仕事に集中できなくなりました。A部長は、その部下のやる気を取り戻すべく、何度も話し合いの場を持つことで仕事への意欲を再燃させました。
一方、B部長は、部門の課題について、課長たちに分かりやすく伝えます。そして、部門をよりよくするためには、それぞれが何をすべきかを検討させ、その結果についてフィードバックしていきます。課長たちは、思考錯誤を繰り返し、業績向上や組織力を高める視座やその方法について身に着けていきました。
さまざまな状況や背景がありますので、一概にどちらの方がいいと断言してはいけないのかもしれません。しかし、部門全体の組織力を高める観点から考えるのであれば、B部長のアプローチ方法が効果的に機能すると考えるのが妥当だと思います。
課長や部下たちの立場から考えてみると、その効果がより理解しやすのではないでしょうか。B部長のアプローチは、仕事で戦っていくための武器や戦法を与えてくれるよき支援者です。一方、A部長のアプローチは、戦意を喪失させて振り回す、敵か味方か分からなくなります。
人と人との関係性なので、A部長のやり方が全てを否定しているわけではありません。結局は、上司が部下を動かす手立てについてのことですので、その意味を理解しているのであればよいのです。前回のコラム、「第93号:できる社員のやる気を奪う上司の正体」でも書いていますが、上司の能力は部下たちの仕事や意欲に大きな影響を与えます。
上司の能力に手を付けずに、コーチング、1on1などといった部下との関係性を深めるための手法が流行しています。関係を構築は重要なことですが、面談や対話することを目的に据えてしまうが故に、単なる雑談や業務報告で済まされてしまうことも珍しくありません。
なぜ、上司と部下の接点を増やそうとしているのか。また、その成果として期待していることは何かが不明確であるために、このような施策を辞めてほしいと心から願ってしまう社員が増えてしまうのも仕方ないことです。会社や人事部門がこうした背景をきっちりと説明すべきなのか、はたまた、会社の意図を汲んで行動することが管理職層の務めなのかは分かりません。
明らかなことは、経営層・管理職層にいる方々が、部下・部門の課題を認識し、業績を向上させていく能力が備わっていなければ、どれだけ優れた施策も効果を上げることは難しいということです。
あなたは、リーダーとして成長するために何をしていますか?