第80号:ネットショッピングから学ぶ会社の風景
「好きな時に好きなもの」「欲しいものを欲しいだけ」と買う側が「好きな時に好きなもの」「欲しいものを欲しいだけ」と買う側が場所や時間を気にせず、購入して届け先まで指定できる便利な世の中になりました。使いやすさや簡単さ、そして慣れというものは購入者から思考を奪うことがあると感じています。
ある商品を購入したいと思い、ショッピングサイトを検索していました。複数のサイトと店舗を比較していると、表示価格に約5割もの差が生じていることに驚いてしまいました。安い理由を明記しているところもあれば、不記載のところもあります。何かがおかしいと感じ、製造元の企業サイトを閲覧するとそこには、非正規販売ルートの店舗名が注意喚起として明記されていました。
より安く、より多くポイントを得ることに夢中になり、危うく怪しい商品に手を出すところでした。このようにネットショッピングはその手軽さ故に、欲のままにポチポチとボタンを押してしまうことがあります。それはまるで、嗜好を熟知したショッピングサイトに進んで取り込まれに行っているようです。
経営サイドに立って考えれば、購入者や購買数が増えれば増えるほどより有利に商売を進めていくことができる仕掛けは極めて重要なものです。自社の利益を出すためには、使えるものを上手く使っていくことは当然のことです。
サイトを利用してビジネスしている店舗もまた、事業をしているわけですから販売して利益を得ることを目指しています。同じ商材を扱っていても売り方は、各店舗がさまざまな方法を採っていることを皆さんもご存じだと思います。その一方で、購入者はニーズに合ったものを手に入れるための工夫しているのでしょうか。
ビジネスの世界を見ていると儲けることが上手い企業は、自社が引き起こしている事態をあたかも他所で起きているかのように見せかけることがあります。あるいは、顧客心理を見抜いて購買意欲を煽ることもあります。欲しいと思う商品を入手することばかりに目を向けていると、品質はもとより偽物を掴まされていることもあるかもしれません。
冒頭に書いた思考する力の低下とは、情報やサービスが安心・安全に提供されているという思い込み、良し悪しを評価する基軸が瞬間的かつ単一的になりがちになることが要因なのではないかと考えています。
これと似たような現象は、企業内でもあるのではないでしょうか。人の心を上手につかむことで人を動かしている企業は、社員が喜ぶような施策を多様に打ち出しています。人を大事にしてくれるよい会社だと信頼を寄せ、安心して働いている社員がいます。
両者は、良くも悪くも持ちつ持たれつの関係です。会社に対し全幅の信頼を寄せる一方で、自らの欲に流される社員を量産しているかのようにも映ります。あるいは、企業がたんに社員を消費しているという可能性も捨てることはできません。
その関係性を検証することは難しいですが、はっきりと言えることは、慣れに乗じて情報の裏取りしない、囚われると抜け出すことができない、しやすいことしかしないなどといった消費者的な観点で仕事をする社員は減らす方が得策だということです。
見解に違いがあるかもしれませんが、一見、素直で物分かりがよい社員は低エネルギーで動かすことができます。ですが、小さな欲求を抑えることできない社員を増やすことは後々の経営にダメージを与えます。有名経営者からのメッセージに、「建設的批判眼」「経営者マインド」「一段上の視点」などという言葉が出てくる意味を考えれば、消費者的な姿勢はビジネスを進める上では厄介となるのです。
普段なれ親しんでいることは、時に人を無能にしてしまいます。あなたが日常生活から得ている学びはなんですか?