第48号:凋落していく会社の“あの人”の正体
そういえば、あの会社名を聞かなくなったと、ふと思い出した会社があります。随分に前にお取引させて頂いていた企業ですが、現状が気になり調べてみると驚きました。というのも、買収されてしまったことが分かったからです。
この仕事に携わっていると、勢いよく伸びていく会社、着実に成長していく会社、衰退の一途を辿る会社というように、それぞれが置かれている状況を反映しているかのような場面に遭遇する機会に事欠きません。そのため、今回に気になった会社も含め、上場廃止が決定したなどを知った時には「やっぱりそうだよな」と深く納得してしまうことがあります。
全社を巻き込むプロジェクトが進み始め、賛同者も増え、もう一山乗り越えればといったあたりの頃です。ある部門の課長が、おかしなことを言い始めました。聞いている誰もが何を言っているのか理解できず、困り果て仕方なくその場は解散となりました。後日、事情をヒアリングに行った担当者から「派閥争いですね」と苦笑しながら報告をもらったことがありました。
このプロジェクトの主幹は、ある部門の部長でした。つまり、部門間での勢力争いが起こり、その駒にされたしまったのが上記の課長です。プロジェクトメンバーには、もちろん他の部門の方も多く関わっていましたが、誰も気にする様子がありません。その理由は明らかですが、こうした社内政治やパワーゲームが状態化しているということです。
この争いはかなり長いこと続き、結局、当初の予定を大幅に変更して完了となりました。その数年後には、買収されていたようですので、会社の要職に就いている人たちの行動がいかに事業に影響を及ぼすのかがよく分かります。
さて、儲からない会社の管理職には、以下のようなある特徴があります。自分の興味や関心がある事柄に対しては、趣旨を整えて物事を進めていくことができます。新しい企画作りや取り組みを始めて、それを導入することには非常に意欲的です。出世してきているだけに、良くも悪くもそれなりに自負心はあります。
ところが、事に取り掛り壁にぶち当たってしまうと、そこから逃げだしてしまいます。無理なこと、勝てないことを極端に嫌う傾向があります。要するに、「やりたいこと・できることしかしない」というスタンスです。ですから、本来の目的や成果に対する基準設定はしていません。
「やったらやりっぱななし」でも気にしない。社内調整も上手くない。社内でも面識がなければ関わらない。これだけ、しないことが多ければ経営における圧倒的な実務的な対応力が低くなることは、誰もが簡単に想像することができます。
加えて言うならば、「やりたいこと」の1つには、ビジネス界で流行しているツールや手法の導入があります。世界中で出回っている「流行り」に乗りたい、もしくは、それを導入すれば業績が上がる、と前のめりになりなっていきます。
そして、ビジネス環境に即している、会社にとって有益であると主張します。間違えのない決定を下したように映りますが、単なるコスト削減でしかないことが散見されます。事業部門として、どこに進んでいくかを導き出す前に、目先の分かりやすそうなことに飛びつくやり方は悪手です。
会社の状況が、危うくなるには予兆があります。それに気がついている社員たちもいるはずですが、今回みたような例の会社では、到底こうした意見が経営陣に届くことはないでしょう。
自分たちの会社を守るためには、経営をできる人材を育てていかなければいけないのではないでしょうか?