第106号:怠け者 VS 働き者

「我が家は、共働きです。子供の送り迎えや行事があるので、妻と時間を調整しながら仕事しています。でも、僕みたいな働き方をしている人って、会社からは評価されないんですよね。うちの会社は、だらだらと意味のない残業している人の方が、評価されるんですよ。」
とある企業で管理職を目指している方が、休憩時間中にぼっそと語った本音です。働き方が問われる時代になり、労働時間に対する認識は変化しつつあります。しかし、管理職、社員ともにまだまだ「会社に長時間いること=頑張っている」と認識してしまうことがあります。
繁忙期、新規事業、事件・事故への対応などにより、長時間勤務をせざるを得ないことがあります。このような時に、業務が停滞しないように尽力してくれる社員は上司にとってはありがたい存在です。しかし、その行動が事業成長に有益なのかは、検証すべきだと考えています。
ある企業には、月末になると、必ず遅くまで仕事をしている社員がいます。本心では、残業したくないと思っていますが、「月末だから仕方がない」と、自分に言い聞かせています。自分の仕事だからと誰にも頼らずに、業務をこなし、本人も「頑張っている」と思っています。
反対に、ほぼ毎日、定時に仕事を切り上げて早々に帰宅する社員がいます。無駄なことが嫌いで、いつもどうすれば仕事が楽に進められるかを考えています。緊急な事案が発生しても、再発防止、似たようなことが起きたらすべきことをまとめています。本人は、「仕事は効率化と合理性が大事だ」と思っています。
さて、皆さんならこの両者をどのように評価しますか?また、自己評価と上司の評価は一致すると思いますか?企業経営にとって、社員の働きぶりを正しく評価することは、とても重要なことです。しかし、多くの企業では、「見た目の忙しさ」や「長時間労働」によってその優劣をつけることがあります。
特に、社員の評価に慣れていない企業では、実際の成果よりも、上司の目につく行動を評価しがちです。忙しそうに動き回る社員は「よく働いている」と認識することがあります。実際には雑務に追われ、肝心の業務の進捗は思わしくない、優先順位がつけられないということも珍しくありません。
逆に、要領がよく、額に汗をかかずに仕事をしている社員に対して、「楽をしている」というレッテルを貼ることがあります。てきぱきと時間内に業務をこなしていても、手を抜いていると勘違いしてしまうこともあります。このような仕事の結果と過程の捉え方の違いによって、社員の自己評価と上司からの評価に差が生じることがあります。
上司と部下の評価結果が、異なるのは立場の違いを考慮すれば当然のことです。しかし、この状況を放置すれば、社員はやる気は失われ退職する可能性もあるため、仕事に対する期待と現状を社員とともに確認していくことが必要でしょう。
社員の評価は、一人ひとりの能力、仕事の成果・結果を見極めていきます。その軸は、仕事の成果・結果です。その基軸が明確になっていなければ、「好き嫌い人事」の範疇を超えることはできませんし、それを理解できる上司陣でなければ社員からの信頼や納得感は得ることができません。
企業が成長するためには、見た目の忙しさや好みに惑わされない評価の仕組みが重要です。そして、成果を明確にしていくことは、評価する上司陣の仕事の成果・結果に対する視座を養うことにも繋がります。
あなたの会社に、忙しいふりをした怠け者はいませんか?