第24号:頼りない上司と若者の未来

 先日、ある会社で中堅社員を対象とした、キャリアに関する研修を実施しました。10年先の未来を描いていきますが、この研修を行う度に考えさせられることがあります。キャリアを描いていく上で、日ごろ上司が部下に対して何を伝えているかによって、その内容が大きく異なってしまうことです。

 企業におけるキャリアは、本人の意思や希望だけではなく、ビジネス環境がどのように変わっていくかを考えながら描く必要があります。そのため、社員一人ひとりが事業環境や仕事の将来性をどのように捉えているかにより、導き出す未来が大きく変わります。

 担当している業務のことしか見えていない社員にとっては、先行きを考えることは非常に難しい作業だというのは想像に難くないでしょう。その一方で、すらすらと書き出している社員もいます。この違いは何かと言えば、仕事や職場について考える機会を持っているかいなかだと言えます。

 自発的に先々を考えている社員ももちろんいますが、大半は上司の影響を受けています。例えば、製造部門のA課長は、「うちの課の仕事は、手作業が重要だ。」と説き、目前の作業に集中させようとします。一方で、製造部門のB課長は、「これからは、自動化だ。自分たちの仕事の意義、物事の本質を常に考えて動け」と現状とその先を意識させた働きかけをしています。

 当然、A課長の部下たちは、「自分たちの仕事は、絶対に機械化されない仕事です。だから、10年後も今と変わらない」と胸をはります。反対に、B課長の部下たちは、「これからは、製造でも情報やネットワークインフラに関する知識や技術がないと仕事ができなくなる。だから…」と来るべき未来への備えについて語っていきます。

 もちろん、前者のようなキャリアビジョンにならないように研修は設計していますが、それでも、毎日やっている業務、上司からの言葉から離れたところで仕事の先行きを考えることには限界があります。つまり、日常的になされている会話やビジネスの習慣は、部下たちの職業人生を形成しているということです。

 少し脇道にそれますが、面白いことに、自分たちの仕事は絶対に変わらない、やり方は間違っていないと豪語している部門ほど、数年後には、機械化・平準化されていたという話をよく耳にします。笑い話程度で収まるならまだしも、そうした部門にいる社員たちは、急激な作業工程の変化、それについていけない社員、社員同士のいざこざ、大量の退職者とその穴埋めで疲弊しきってしまいます。

 考え方によっては、それはそれで成長する機会だと捉えることもできます。とはいうものの、やはりビジネス環境の変化を予測できない上司には、物足りなさを感じざるを得ません。管理職の知識や見識の不足は、当面の業務をまわす上では大きな問題とはならないでしょう。

 ところが、先にみたように管理職の一言ひとことは、社員たちの仕事に対する視野や視座に大きな影響を与えていきます。これだけ世の中が変化しているにも関わらず、今と同じ状態で居続けることができるという見込みの甘さは、状況認識に偏りが生まれる、問題の見逃しなどが起こる可能性が高いと言えます。

 では、どのように管理職のレベルを上げればよいのかが気になりますよね?

 ある会社の人事部長と似たような話をしていた際、「うちの会社は、知識テストを導入した。僕は結果がよかったよ。」と自慢されたことがあります。管理職の管理レベルを上げるとは、こういうことなのでしょうか?

 社長のみなさま。あなたは、会社の管理職のレベルをどのように高めていきますか?