第69号:「成長できない」残念な会社の特徴

 「自分がやっている仕事の目的なんて、考える必要がないと思っていました。」とある社長との打ち合わせの際に出た一言です。経営層の方とお話をさせて頂いていると、部下たちが仕事の意義や目的を理解すべきであり、自分にはそうした必要はないと考えている方が多いように感じます。

 特に、プレイヤーのように経営層の皆さまが動いている会社ほど、数字確保、売上確定、顧客対応などといった目先の活動に力を注いでしまう傾向が見受けられます。事業運営上必要なことだと思いますが、それらの対処に時間を割くことが、未来を切り開いていくことが必ずしも一致するとは言えないのではないでしょうか。

 つまり、以前のコラム「第1号:社長が考えるべき、人材の価値を高めていくための「仕事の定義」」でも書いていますが、社長の仕事とは何かを自らが定義することが、会社・組織・事業の将来を形作るのではないかと考えています。

 上記のコラムでも書いていますが、問題や課題が山積している、残業で乗り切ろうとする、退職者が続出する、部下が成長しないなどといった現象が起きている時ほど、社員教育や研修で行うことでやり過ごしてしまう会社があります。普通に考えれば、ガス抜き程度の効果を発揮することはできるかもしれませんが、事業運営において有効に機能するとは思えません。

 問題や課題が次から次へと出てきてしまうのは、経営層がそうした事態を発生させる体制でよしとしているからです。厳しい言い方かもしれませんが、組織として掲げていることと実務の繋がりを上手く見出すことができない経営層がいるということです。そして、経営者もそれを許容しているということです。

 このような事実に気がつかず、目先の対処ばかりに注力していても、組織レベルを高めていくことは難しいでしょうか。業界トップクラスを走っていた企業ですら、このような法則を忘れてしまい気がついたらその座を譲り渡していたという例は山ほどあります。

 経営に携わる方々が仕事の目的を考えるメリットは、自社あるいは各部門(職位)で出すべき成果や結果を明確にすると同時に、その過程で優先的にしなければこと、目標達成に欠かせないこと、組織を形成するために必要なこと等について、自問することができることです。

 毎日、当たり前のようにこなしている仕事や業務について、改めて考える機会はそうそうありません。経営層がこのような視点から業務を捉えなおすことは、部下を動かして成果を上げるためには重要な役割を果たします。ここまでお読み頂き既にお分かりの方もいらっしゃると思いますが、各部門(職位)で出すべき成果や結果があいまいとなっている組織は数多く存在しています。

 上位者がはっきりとした解や指標を持ち合わせていないにも関わらず、部下たちに目標を作らせて管理するというのは、図々しいのではないでしょうか。目標で部下たちを鼓舞しようと目論みが外れ、結果や成果の判定ができずに不満や不公平観を募らせているというのが実態だと思います。

 目標で部下のやる気を高めることには、意義はあると思います。しかし、その前に経営層がすべきことがあるはずです。自分たちが何を目指し、そのためにやるべきことは何か、その良し悪しを判断する材料は何かをきちんと整備していかなければ、人を動かしていくことは難しいでしょう。

 経営者の仕事は何ですか?