第73号:社員の資産価値を上げられる人と下げる人

 「うちの会社の社員たちは、優秀です。」とある経営者の言葉です。優秀という言葉をどのように定義するかはさておき、「命じたこと(しなければならないこと)を忠実にできる」ことを示している場合が多いように感じます。

 優秀さを考える上で大切な視点があります。それは、上司は部下たちの力を活用して、「何を実現すべきか」が明確になっているということです。拍子抜けするほどシンプルなことをお伝えしていますが、ここを理解していない上司陣は多数存在しています。

 企業規模に関わらず、今ここにある業務をこなしていくことは当たり前のことです。しかしながら、自分たちの会社、自部門の事業、自チームの業務は絶対に無くならないことを前提として、無目的に仕事をしている上司陣がいます。当然ながら、彼らには人材を活かす力も低いでしょうし、その価値を高めていくという発想には至らないでしょう。

 「いや、僕は部下たちを上手く使っている」と反論をなさりたい方もいると思いますが、「上手く人を使う」ということは一体どのようなことを指しているのか考えてみてください。この言葉を使う方には、ただ業務を割り振り、指示したことが完結すればそれでよしとしている傾向があります。

 人を活かすという観点は、永続性のある会社にしていくために、社員たちの能力、知識、経験を駆使して事業を発展させていくということです。そのためには、社員たちが事業に貢献できる力を蓄えることができるように、業務の幅や難易度を高めて経験値を上げていくこと、場数を増やすための機会も提供していくことが求められます。

 くどいようですが、主役はあくまで、事業をどのように継続させ発展させていくかです。そのために、どのような人材観を持って組織を運営するかが、重要となるのではないでしょうか。すでに、あちらこちらの企業で、旧来的な価値観で「人を使ってきた」企業が、その慣習から抜け出さなければ不味い事態になることに気がつき始めています。

 社内の常識が、世間では非常識と捉える事案が増えており、それが時にSNSなどで話題となり批判を浴びる、多額の損失を生む時代となっているのは周知の通りです。そうした事態におびえる前に、今一度、自社の人材観を見なすことが必要だと考えています。

 成長し続ける会社は、その会社独特の人材観を持っています。それが、時代にマッチすることもあれば、裏目にでることもあるはずです。自動車産業で今起きていることは、まさに、正しいと考えてきたことを修正する時期に来ていることを象徴しているように思います。

 同じことを同じようにやり続けていても、成長性や発展性が生まれるわけがありません。あなたは、社員たちを事業価値を高めていく人材へと引き上げることができますか?