第72号:事務部門の生産性を上げられない上司たちの思考ぐせ

 事務系部門の方々とお話をさせて頂くたびに、捌き仕事をしている人が多いと感じています。捌き仕事とは、自分がこなすべき書類や任務を片付けることだけに焦点を置いていることです。やらなければならない仕事に注力することは当然のことですが、ここで指摘したいことは処理することに夢中になってはいけないということです。

 社内ルールや規定、基準通りを守り手続きを進めていくことは、効率的に組織を動かしていく上で必要なことです。ところが、業務を回すことが目的化し、決まりやこれまでのやり方から逸脱することを絶対に認めないことを善としていることもあります。特にある程度、組織化されている会社ではよくあることだと思います。

 このような業務運営を一概に否定するわけではありませんが、どうも忘れられている視点があるのではないかと気になっています。社員に求める書類や手続きがある際、手順やその意図が分かるようにしているか、社員に負担が掛からないように配慮しているか、不明点を問い合わせた際の対応は適切か、などというような事務部門内で仕事の効果性を検証していないのではないかということです。

 別の言い方をするならば、部門のなすべきことが不明確なまま、これまでの慣習に従って業務を遂行しているだけなのではないかと疑いを持っています。ある会社の人事マネージャーは、自部門の役割を定義しなければ組織内で不要な部門になってしまうという危機感からご相談に来られました。

 組織内の効率性を高めていく上では、誰でもできる仕事、平準化されている業務はアウトソーシングした方がよいという考え方は根強くあります。特に、事務系の部門であれば、分野ごとに専門性に特化したサービスを提供している会社も増えています。そのため、部門ごと外部に出した方が得策だと判断されることもあります。

 組織的な決定が下されてしまう前に、自部門の強化を図ろうとなさっていました。その中で人事マネージャーがおっしゃっていたのは、人事部門の意義と社員たち何を提供するチームになるのかを導き出したいということでした。

 このように、自ら危機意識を持って行動する事務部門の方は珍しいと思います。というのも、先にお伝えしたように、前例踏襲的に物事を進めることに慣れていると、組織内外で起きている変化に疎くなってしまうからです。社内会議や面談などの手間がかかることに時間を取られているうちに、自分で考えることを辞めてしまう人の方が圧倒的多数だからです。

 恐ろしいことに、このような部門長の下で動いているメンバーたちも、似たような状態に陥っており、規定の枠組みから抜け出すことができなくなっています。そのため、時に社員たちから出てくるクレームやフィードバックに対して否定的な反応を示すこともあります。

 事務部門で特に課題と感じるのは、顧客、製品、売上に直結していないこともあり、自分たちの業務の進め方、やり方、成果や結果に対してのこだわりが弱いことです。また、担当業務をこなしていることに満足しきっている社員ことに気にかかります。作業要員でいることに安心し、部門全体や他のメンバーとの連携意識を持てないは部門全体の生産性を下げることにもつながります。

 何を問題としてみるかは、部門トップとしてのビジョンに関わってくると考えています。あなたが考える部門の未来と現状はどのような関係になっていますか?