第74号:社員たちとの話し合いを大事にしたい人が陥る罠
あなたは、どのようなリーダーシップスタイルをとっていますか。そのスタイルをまとめて表現する時に、ワンマン型、民主型、放任型、などという枠組みがあります。少し前には、サーバントリーダー型の必要性とそのスタイルを学ぶ研修が非常に流行っていたことを思い出します。
先日、ある経営者と話をさせて頂いた時のことです。「社員たちが言ってくることが、想像できる」と漏らしていました。月に何度か社員たちと会議の場を設けているそうです。その場で事業展開、事業運営について社長の見解を伝えるそうですが、社員からは反対意見が多く抵抗感を示されてしまうとのことでした。
今の世の中の流れから考えると、独裁政権のような強いリーダーシップスタイルを取ることに対して躊躇してしまうことは当然のことだと思います。その一方で、儲けている企業のトップたちが、民主的なアプローチで人を動かしていると本気で思っている方は少ないと思います。
では、一般的な組織において、管理職、経営者と呼ばれる方々が、どのようなスタイルで社員にアプローチしているのかといえば、人によってさまざまだということです。様々と言われれば、そりゃそうだと納得して頂けると思います。ただ、この際に考えて頂きたいことは、自分自身が部下にどのような影響を与えたいと考えているかが極めて重要となることです。
別の言い方をするならば、「社員を動かして、何をしたいのか」です。人を動かす立場にいるあなた自身が、「成し遂げたい」ことがはっきりしていないと、メンバーを動かす最適解を導き出すことがとても難しくなってしまいます。
ある方は、なんでも自分で抱え込んでいて、小さなことにまで口を出すような方法で部下を動かしていたそうです。この方法の最大のデメリットは、指示を出す方本人にとてつもない労力が掛かることです。ご本人いわく、年齢的に自分1人が頑張ることがきつくなったことが、社員との関わり方を見直した理由の1つだと話していました。
きっかけはどうであれ、人の動かし方は変えることもできますし、また、変わらざるを得ない時があるということです。とりわけ経営に与える影響が高い職位にいる方には、自分のスタイルが良いのか悪いのかを適切に見極めることが必要なのではないでしょうか。
自社や自部門の現在地(組織としての成長段階)、また、そこで起こりうる問題点を人は往々にして見落としてしまうからです。その結果として起きる悲劇は、外部要因ばかりに意識が向かい、成長の妨げとなっている要因を理解することができないことです。
個人的な見解ですが、組織の発展というのは意思決定する方の成長と極めて密接な関りがあるのではないかと考えています。自社あるいは自部門の業績を上げることを徹底的に考え抜いている方は、人を動かす(活かす)手法を複数持ち、相手によって使い分けています。
よかれと思ってやっていることは「やるべきこと」を達成する上で本当に正しいのか、と自問した上で自分の行動を変えていくことができる方々です。つまり、自分の言動が社員や組織にどのような影響を与えているのかを問い続け、他人を変えようとする前に自分のやり方を変えることで成果獲得を目指しています。
冒頭で明記した社長の話を否定するつもりは全くありません。しかし、どれだけ社員たちの意見や要望を聞いたとしても、事態を進展させると決めるのは自分しかいないということを再認識することが必要だと感じています。
あなたの会社、部門は誰が動かしていきますか?