第9号:社長が知らないと恥をかく求人への応募を増やす基本
「大野さん、応募者をたくさん集めて、その中から選りすぐり1人を採用したいです。」とある社長から採用に関するお悩みを話していただいた時の言葉です。
応募者が多ければその中に、1人くらいはお眼鏡にかなう人がいるはずだから、それを増す方法を知りたいとのことでした。巷には、応募者数が増えれば、それに比例してよい人材が応募してくるという理論があるようです。求人広告会社の担当者から、母集団を広げないといい人材は採れないと、何度も説得されているうちに応募者を増やさないといけないと思い込むようになったという話はよく耳にします。
確かに母数が多くなれば、確率的には、よい人材の応募が増えそうだという予測を立てたくなります。そうした気持ちはよく分かりますが、見込み通りの結果を得られることは稀です。母集団形成が上手くいかない会社のほとんどは、求人会社や仲介会社に頼りきってしまい、他の対策をとることを二の次にしてしまいます。
当たり前ですが、「投網を打ったら鯛が採れた」というように、そこらに仕掛けをしたら大物が掛かってしまった的な都合のよい話はありません。狙うべき場所や使うべき道具は、発注する企業が押さえていかなければ、いつまで経っても応募者の増加には至らないでしょう。
求人活動で、大手企業が有利だと言われるのは、知名度があるからです。特に、一般顧客を対象とした事業を行っている企業の応募数は、圧倒的に多いことは想像に難くないでしょう。一方、法人を対象とした事業で、業界内で優位な立場にある企業でも、認知度が低ければ、求人活動に多大な労力を費やさなければならいのが現実です。
要するに、より多くの人に自社の存在を知ってもらわなければ、応募者を増やすことができないということです。大手企業でも、新しい地域に打って出る時には、さまざまな方法で進出告知をします。そして、その地域で採用活動を行うことを周知した上で、求人広告を出していきます。
応募者が少ない、来ないと感じている企業の多くは、自社を周囲に認識させる活動が圧倒的に不足している可能性があります。普通に考えれば、名前も実態もよく分からない会社に応募することは恐怖以外のなにものでもありません。本社所在地や営業等の拠点がある地域で、無名もしくは存在感がゼロという状態では、当然応募者を増やすことは一筋縄ではいかないでしょう。
店舗や大きな拠点があるから、地域の人には認識されていると思っている方がいます。確かに、そこに存在していることは知っているかもしれません。では、自社が「どのような会社」で「何をしているか」を知っている人がどの程度いるか把握していますか?
言わずもがなですが、似たような商売をされている会社でもその実態はさまざまです。ですから、自社の事業や特徴などといった情報を紹介できる場や機会を設けることが大切です。そうした案内を活かして、応募への敷居を下げると同時に、この会社で働きたいと思わせる工夫が必要不可欠となります。
人材募集は、単純に応募数を増やしたところで、欲しいと思う人材が集まっていなければ、手間が増えるだけです。それは、一見明るい事象のように捉えられますが、自社への理解度や志望度が低い応募者の対応をする採用担当者や面接官の負荷が非常に高いものになってしまいます。だからそこ、良質な母集団を作り上げていく策を打ち立てていくことが、よい人材を採用することにつながるわけです。
御社は、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるという論理で、矢を打ち続けますか?それとも、勝算を上げる戦い方を身に着けていきますか?