第63号:経営陣がハッとする採用の話

 弊社では、必要な時にそれなりにご経験のある方のお力を借りるスタイルで経営をしています。ある領域のプロフェッショナル、あるいは、これまでの経験を転用して人事領域に活かせる力を持っている方々とこれまでお付き合いをさせて頂いてきています。

 応募者の履歴書・職務経歴書を拝見させて頂きながら、違和感を覚えることが多々あります。特に、大手企業で課長、部長などの職位を経ている方に限って、実際にどのような成果を出してきたのかが不明だということです。ご自身がいかに優秀であったか、努力家であるかのようなニュアンスを含んだ自己PRが書いてあるものの、「それで、何ができるの?」と質問しなければなりません。

 興味本位で申し訳ないと思いながら、どのような話が聞けるのかを試してみたくなり面接をさせて頂くこともあります。質問を繰り返すことにより応募者の実績を知ることができますが、わざわざ時間を取るまでもなかったと後悔することの方が多いのも事実です。

 弊社でとある実験を行ったことがあります。あるデータを渡して、その考察結果をまとめてほしいと依頼しました。年代・業界・職種が全くことなる経歴を持つお2人にお願いしました。1人目(Aさん)50代、人材業界での経験・知識が豊かな方です。2人目(Bさん)は30代、製造系企業で開発系の業務している、データ分析に関する知識と経験に優れた方です。

 皆さんは、どちらの方のアウトプットが期待値を超えてきたか想像できますか?まず、Aさんは業界経験が長いだけあって、期待水準のものを出してきました。それに対して、圧倒的に優れたアプトプットを出したのは、Bさんでした。その秀逸さには驚かされるものがあり、同じ業界にいる人ではその発想すら持ちえないような観点を見出してきました。機会があれば、仕事を依頼したい人物です。

 つまり、ここで皆さんに最もお伝えしたいことは、業界の経験という基軸を重視し過ぎるとよい人材を取り損なうことがあるということです。例えば、採用、特に中途採用時に、業界経験や業界知識の有無に重きを置いていないでしょうか?面接官トレーニングをさせて頂くと、面接官である管理職の方の中に、「うちの会社は、この業界での経験がないと仕事ができない」と頑なに主張する方がいらっしゃいます。

 特に、その発言が出るのが、採用時の評価項目について説明しているときに集中します。裏を返せば、自分たちの経験値でしか人物評価をできないと言い張り、従来通りの面接の仕方が合理的だと説明しますが、説得力に欠けています。一方で、高度な専門性を有する仕事の場合は、細心の注意を払う必要があることは言うまでもありません。

 自社の求人を考える際に、必要不可欠な観点の1つに「成果や結果を出せる人物」を見極めることができるかです。笑えない話ですが、面接室に入室した時にオーラがある、同郷の人に悪い奴はいない、元有名企業の社員なら間違いがない、と思い込んで評価している面接官は、皆さんが考えている以上に存在しています。

 このような見立ては、経験即から培われていることもあるため、すべてが間違いだと言い切れません。しかし、経験値や感覚は、個人特有のものであり、集団知にならないことが組織としての課題です。このような状況を改善しようと、各社が活動していますが、目的やプロセスに一貫性がないために「惜しい」状態に収まっているように感じています。

 当たり前ですが、採用選考で大事なことは「何を見極めるか」です。その観点、その方法を採用担当者だけが習得して、組織が動くわけがありません。そこには、やはり経営陣のコミットメントが必要だと考えます。

 あなたの会社における「成果・結果」とはなんですか?
 それを見極める指標はなんですか?