第16号:経営者としてのこだわりと後継者育成

 

 「自分の後を継ぐのは誰なんだろう…大野さんに言われてはじめて、考えましたよ。ただ、経営と現場をまとめることは全く意味が違う気がするし、どうしたもんですかね…」と、コンサルティング中に、次世代人材の育成について交わした一言です。

 いずれは、誰かに経営を引き継ぐ時が来ることは分かっている。この人だと明言できる人材を有している企業は、それほど多くはないのではないでしょうか。「もし、社内で経営者を引き継げる者がいるなら…」、「もし、間違った後継者指名をしない方法があるなら…」と確実な何かあればよいのですが…。それほど、経営は簡単なものではないとは思いますが、他社はどのように考えているか知りたいと思いませんか。

 組織の中から経営者になれる人には、何か共通することがあるのか…ある会社で複数名の経営層にインタビューをさせて頂いたことがあります。やはりですが、経営者には強いこだわりがあります。当然と言われてしまうかもしれませんが、経営者は、「勝つこと」「徹底的な合理性」「経営の継続性」を軸に仕事をしてきています。

 「経営が分かること、軸をぶらさないということが大事です。だけど、知らないことを知らないままにしている人に限って、奇をてらうことをして、自分の色を無理に出そうとするんです。経営って、そういうことじゃないです。」、「いろいろな社員たちを見てきましたけど、結局、利益を上げる責任から逃げる人は経営者としてはだめなんですよ。」と、そのあるべき姿について語って頂いたことが、印象的でした。

 経営者としてやるべきことは、2つの視点があるのではないでしょうか。目に見える結果や成果を確実に確保していく視点、そして、将来への布石、変化への挑戦という投資的な視点です。これらの視点がなければ、永続的な経営は困難となります。

 つまり、経営を引き継げる人材には、これらの視点とその責任を果たしていけるかが重要になるということです。もちろんこれら以外にも様々な要素や見方があることは、充分に理解しています。しかしならが、それらは、恐らく各社の置かれている状況や後継者各自の課題等によって変わるものではないでしょうか。

 大切なことは、その責任を全うすることができる人間かいなかをどのように判断するのか…。ということです。責務を果たした人は、「先代経営者が非常に厳しかった。要求水準も高い上に、厳しい指摘が続くこともあった。けれど、それは意地悪をされているわけではなく、育てられていると感じていた。」と言います。

 別の方は、「経営者になることにコミットした瞬間があった。自己犠牲も含めて、会社人間になる、使命を果たすと決意を固めた。」と語ります。

 このような話を聞くと、結局最後は本人たちの意志や考え方の問題と捉えてしまうかもしれません。最後の最後は本人なのかもしれませんが、責任を果たすとはなにか、挑戦する機会や場があるか、などといったように事業運営の中で、意志や努力に頼らならいで人が育つ仕掛けを設けておくことは必要です。それは経営視点を持った人材を増やし、事業への貢献度を高めることを可能とするからです。

 あなたは、「引退しない社長」になりますか?「引退できない社長」になりますか?