第54号:成功した企業が生き残りを掛けてやり続けるコト

 「大野さん、あの人と話をしたそうですね」と、人事部門の責任者がわざわざ訪ねてこられ、いろいろなお話をさせて頂きました。あの人とは、よくも悪くも社内では名前が知れ渡っている人物で、何を話したのか気になったようでした。

 どこの会社にも社内情報に詳しい「事情通」のような方々がいます。「誰が辞める」だの、「誰が異動する」だの、どこで仕入れたのか分かりませんが、人が知らないようなネタをいち早く仕入れてきて、誰かに言いたくて黙っていることができない人たちはいます。

 当然ながら、この人事責任者の目的は、事業上の理由があって社員の情報を意図的に収集しています。強い会社は、こうした機能を人事部門に任せて、様々な業務を通じて情報を集めています。それらが特に有効に機能するのが、昇進や昇格時です。大抵の上司は、自分の部下をほめるでしょうし、引き上げようとします。ですから、それらの評価に正確性があるのか、徹底的に確認していきます。

 周囲からの評判、物事の決め方、人間性、「えっ、そんなことまで!」と思うようなことまで調べています。人事部門は、事業部門の言い分を鵜呑みにしないためにも社員の理解にエネルギーを注ぎます。上司の好き嫌い、派閥などといった恣意性・政治的な昇進・昇格を阻止することがその狙いです。

 こうした手間を掛けられるのは、もちろん会社としての体力があるからです。しかし、別の見方をすれば、経営者が人間というものを熟知しており、人が陥りやすい罠、犯しやすい罪を理解していたからこそ、組織が機能不全を起こさない仕掛けづくりに投資したともとれます。

 単にコストの問題ではなく、組織として稼ぎ続ける能力をどのように維持/発展しつづけるかを考え続けた先に見出したもののように思います。さて、このように稼げる組織作りをしている企業には、もう一つの共通点があります。

 それは、「言いたいことを言える」ということです。役職や年次に関わらず、部門や業務をよりよくしていくための考えを言い合えることです。もちろん、場の空気を読む、軋轢や対立を生まないように注意を払ってはいますが、それでも、言うべきことは言うという姿勢を貫ける雰囲気があります。

 「誰が言ったか」ではなく、「何を言ったか」を重要視しており、正論を言えるようにしています。「何でも言えばいい」というわけではありませんが、きちんとした理論や筋道を通した発言・意見が求められます。会社や事業の成功につながることを、真正面から議論する土壌を築き上げていることが特徴です。

 その反面、成長性の低い会社ほど「なあなあで済ませる」、「玉虫色の結論」、「上司に意見を言えない」などいった、結果責任に対するあいまいさや強すぎる権威性が色濃く反映された組織運営になっています。鶏が先か卵が先か分かりませんが、上司の好み、派閥、経験が幅を利かせる組織となっています。

 こうした観点から捉えると、「公平かつ客観的な人事のプロセス」と「風通しの良さ」というのは、会社が生き残っていく上で極めて重要な役割を果たすことが解ります。成長し続けている企業は、組織の要である「管理者」、「人材」をないがしろにしない経営スタイルを守り続けているのではないでしょうか。

 あなたの会社が、存続し続けるためにやることは何ですか?