第64号:他では絶対に教えてくれない経営力の秘密

 あるご経営者とご縁があり、様々なお話をお聞きしておりました。会社を複数持ち、充実した毎日を送っていることがよく分かりました。その一方で、話している内容に所々で違和感を覚えます。それが何かが分かるのに、少し時間が掛かりましたが、やっとはっきりしました。

 それは、経営者としての「自信」です。言葉の端々から伝わってくるのは、「これで本当によいのだろうか」、「もっと要領よくやりたい」、「逃げたい」という感情です。もちろん、外見は凛々しく、頼れるリーダーのような雰囲気でしたので、社員たちの前での振る舞いには気を付けていらっしゃると思います。

 経営者(経営層も含みます)には、社員たちには理解できない様々な困難が付きまといます。それ故に、その孤独さに耐えることができずに、お酒、ギャンブル、異性に逃避することで自分を保っているという人もいるのではないでしょうか。ホッとできる場所や至福のひと時を得ることは、決して悪いことだとは思いませんが、一歩間違えたら依存症になるような対症療法です。

 経営者が自信を持てない弊害は、リスクを取れない、現状維持、社員や外部の意見に振り回されるなどというように、自らが足枷をはめて組織成長を止めるよう状態へと陥れてしまうことです。経営者がその状況にあることを理解してればいいのですが、多くの場合は、辛い現状から逃げることに意識が向いてしまうため客観的に自分を認識することは難しいのではないでしょうか。

 では逆に、自信過剰なくらいの人の方がいいのかと言えばそうでもありません。ご存じだと思いますが、自信過剰は経営判断を狂わせる危険性があります。他者からの進言や助言に、耳を傾けることができれば危機回避の可能性もあるとは思いますが、恐らく難しいことだと思います。

 つまり、経営に関わる者は、適正な自信を身に着けていることが重要だということです。ここからは、経営者ご自身の視点から組織を築き上げていく視点へと話を移行させていきます。あなたの会社の社員は、自信に溢れていますか。

 世界有数と言われる企業の方と一緒に仕事をした時のことです。20代後半から30代半ばくらいの方々が、自分の意見や考えをはっきり言い合っています。異なる見解が出ても誰も動じることなく、その理由や背景を確認して合意形成していました。

 上司たちも参加していましたが、意見を求められた時に一言二言話すのみです。ですから、この会議の主体者は、メンバーである社員たちです。この様子を見て感じたことは、社員の当事者意識の高さです。その根源には、エリート意識があるのかもしれません。しかし、自分たちの責任で仕事を進め、やり切っている姿に感服しました。

 世界有数の企業の強さは、「個人の能力が高い」ということだけではなく、組織として個人個人の能力を高める仕掛けを用意していることです。当然、社員たちの見解を黙って聞く上司には、知的自負心、難題を乗り越えた自信も求められることでしょう。

 このような例を見れば「自信」とは、強い組織を形成していくための武器になるということです。年齢や立場に関係なく、全社員がその時々に応じて「自分を信じる強さ」「自分に対する誇り」を醸成する機会を持てることが必要なのではないでしょうか。

 このように見ていくと、出る杭は打たれる日本企業が、その強さともろさが露呈してしまうのは仕方がないことなのかもしれません。

 あなたは、自信ありますか?