第86号:生き延びている会社が必ず持っている力


 「問題ばかり起こし、お客様にも迷惑かけて謝罪によく行かされました。古くからいる社員でしたが、やっと退職してくれたので落ち着きました。これからは、簡単に人を採用するのは辞めようと思います。」とある経営者からご報告を頂きました。

 問題ばかり起こす社員とその対処は、どこの会社でも苦慮することの1つです。こうした社員の扱いは、経営者や上司にとっては大きなストレスとなるのは分かります。一方で、このような話を聞く度に改めて考えさせられることは、人を使う、働かせるということの難しさです。

「人を採用したが、こちらが想像していた成果を出してこない」という、もどかしさを抱いたことはあるのではないでしょうか。雇用した側が期待していること、社員が生み出せる成果や結果が一致することは極めて珍しいことのように感じます。

「採用面接の時に、××をできると言っていたのに!」と、憤りを隠さない方の姿を目にすることがあります。その怒りの矛先は社員に向かいがちですが、攻撃したところで何かが生まれるわけありません。少し冷静になれば、企業側にも落ち度があったことはすぐに理解できることです。

 採用時に限った話ではありませんが、人を雇い、働かせるためには、雇う技量が必要不可欠です。この技は、雇うべき人材の人選、日々の業務における社員同士あるいは上長との関わり合いの中で発揮されており、どうしても現場の社員や上司といった個人の力量に左右されてしまいます。

 このようなバラつきを抑える施策として、採用、配置、育成、評価などを人事部門が主体となって取り仕切ることで、経営効率を高める工夫を行っていますが、雇うべき人材の人選、社員の力を上手く活かす・引き出す行為は、画一化させることが非常に難しく、個人差が生じやすいのも事実です。

 目的に対して、真逆の結果を生んでしまうことが珍しくない「雇う技量」について、経営者が考えるべき理由になるのではないでしょうか。以前のコラム、「第46号:担当者の仕事から会社の実力が見えるワケ」にも書いていますが、雇う技量というのは、経営者の姿勢や方向性、上司の社員への関わり方などといった様々な要因が関わってきます。

 雇う側の論理で物事が動いていくのは、当然のことだと思います。そこに、雇う力を持った社員たちが介在していたならば、何の文句もつけようがないと思います。しかし、とりあえず、目の前の業務をこなせればと淡い期待で雇い、業務を割り振ったことで、厄介事を生んでいるような場合には注意が必要です。

 雇う力について言及しているのは、事業目的を果たすためには、人材という資源を有効活用する方が組織の力を最大化させていく上で、圧倒的に有利に働くからです。事業環境が大きく変わり、社員との接し方はマイルドになっているとは思いますが、それが人を活かすことと同義ではないと思います。

 世の中の流れに沿い、時代に見合った人との関わり方を模索していくことは大切なことです。そして、それが事業の永続性に繋がっていくことが、雇う力の本質なのではないでしょうか。

 人を活かしたことで、あなたの会社の可能性が広がりましたか?