第108号:なぜ、あなたの会社の社員は育たないのか?

 「自立性が必要!あのな、うちの社員は、自分で考えることすらできないんだよ!って、本部長から怒られました。」と報告をしてくださったのは、社員の教育に携わる部門の方です。この企業は、事業環境の変化、IT化の推進などを背景に、自立的な人材を育成することを目指しています。

 「主体性が足りない」、「指示待ちばかり」、「管理職が育っていない」という声を聞いたり、ご自身が感じたりすることはありませんか。思うように社員が働かないのは、一人ひとりの問題と捉えている方がいます。しかし、実は、職場の環境や会社の仕組みに起因していることがあります。

 この会社のある職場の社員の話を聞いてみると、「上司に言われたから…」「給料をもらうためだから…」という言葉をよく使います。自分の作っている部品が最終的にどのような製品に使われているのか知らない、知る必要もないから、ただ言われたことをやりますと話します。

 そして、「上司から目標を出せと言われますが、目標ってなんですか?」と質問されます。彼らは、毎日同じことをし、上司から言われたことをやっているんだから、上司が目標を決めてくれればいいのにと思っているようです。そもそも、目標に何の意味があるのか、理解していませんでした。

 別の職場には、自発的に行動したいこと、チャレンジしたいことを発信した社員がいました。会社の発展のためにと尽力して結果を出しましたが、職場の規律を乱したという理由で、上司から全く評価されず閑職に追いやれてしまいました。そうして、その社員は退職していきました。

 全社には、若手・中堅社員を成長・活躍させようという雰囲気があります。職場改善活動、委員会活動などに参加させ、社員の主体性、実行力を高めようとしています。ところが、よくよく話を聞いていると、成果を出している社員は上司の耳打ちで、言われたことをやっているだけでした。

 このような状況を見ていると、社員がシラケてしまうのは無理もありません。そうした社員の様子を見て、「やる気がない」と一括りにしてしまう企業が数多く存在しています。確かに、「やる気」は重要な要素です。しかし、やる気をあてにし過ぎると、根性論に陥ります。

 上記した内容からも分かるように、「仕事の与え方」、「成果や結果に対する評価」、「成長機会の有無」など、本人以外の要因によって成長を阻害されてしまうことがあります。

 ですから、このような状況を改善するためには、人事評価や人材育成に関する制度を整備することが必要不可欠です。しかし、それは作ればいいという類ものではありません。経営者を含めた現場の管理者までが、その知識と技術を持たなければ効力が発揮されないからです。

 ここまで見てきた問題の根本的な要因には、マネジメント能力の欠如、評価能力の不足、が挙げられます。そして、経営者がこれらの状況を把握できておらず、問題を見過ごしてしまった可能性があります。プレイヤーとして優秀だった人材を管理職にし、「管理職としての教育を受ける機会」や「業績を高める評価の知識」を付与しなかったことが結果的に、管理職と社員の成長に妨げてしまったのはないでしょうか。

 このような事態を放置すれば、優秀な社員な人材は退職や転職し、会社が停滞することもあります。企業が持続的に発展するために、自社の社内環境を見直し、人を活かすための仕組みを整えることは、すぐにでも取り組むべき最優先課題です。

 あなたの会社の社員をグーンと伸ばす仕組み、作りませんか?