第46号:担当者の仕事から会社の実力が見えるワケ

 「大野さんは、うちの会社のことよく知っているので、本当に助かっています。」とある人事の担当者からの頂いた一言です。他社とのお付き合いで、困っていることでもあるのかと思い、話を聞いていました。すると、「面倒くさいんですよ。」と吐き捨てるような一言で、会話は終わりました。

 外部業者との折衝窓口となっている方にありがちなことですが、業者からの質問攻めに合い、それに回答していくことがとてつもなく面倒になることがあるそうです。背景、目的、ゴール設定、外部に発注するに至った経緯など、受注側としては情報がほしいのは当然のことです。

双方にとってよりよいものを実施していく過程のはずですが、これを煩わしいと思っています。皆さんは、なぜ、彼らがこのように「面倒だ」と言うか分かりますか?

 一言で片づけてしまうならば、「浅はか」なんです。やらなければならないことを捌くために、とりあえず、業者に依頼すればそれなりに形になるだろうと踏んで、発注しようとします。自分の考えはないけれど、出てきたものには一言二言は意見したいと思っています。

 ところが、現実には受注側の質問攻撃に合い、明確な目的もゴール設定もないままに闇雲に取り組んでいることを突き付けられてしまいます。その結果、いつもの取引先に、いつもと同じように発注するということになります。受注者にとってはありがたい面もありますが、仕事柄どうにもこの現象を見過ごすことができず、筆を執っています。

 一括りにするとお叱りを受けるかもしれませんが、担当者のレベルは会社の力量です。多くの担当者は、言われたことや自分の業務をこなすことに、注力します。そこに、「思考する」ことを求めたいことは事実ではありますが、そこに「軸」がなければピントが外れてしまいます。

 では、その考えるための基軸とは何かと言えば、経営者からの発信、上司との連携が元になります。「会社や自部門の目標や役割を共有しているのか」、「部門が達成すべきことを部下の業務に取り入れているのか」、「部の知識、経験を考慮した業務割り当てになっているのか」、「お金や人を扱う業務に、上長がどのように関与しているのか」、などというように、上司との関わりは仕事の質に直結することが多々あります。

 このようなポイントをお伝えすると、会社の力量と担当者の関係性をご理解頂けるのではないでしょうか。経営資源をどのように活かして、運用して、最大化させることができるかが会社の力量とします。人材という資産の現状の価値を把握せず、ただ垂れ流しのように使っているだけでは、消費でしかないということです。これは経年劣化のように、社員の資産としての価値は時とともに下がっていくことになります。

 「わが社は、社員たちの自主性を重んじている」ため、社員たちに仕事を任せているというと会社もあります。そのような場合は、必ず、単なる放置ではないことを確認する必要があります。上記の論理で考えるならば、「社員たちのレベルを正しく把握し、業務にアサインしている」、「部下の業務が組織目標の達成とつながっている」などといった観点と合致し、社員の資産価値も事業価値も拡大傾向を示しているということが重要となります。

 組織として、社員の力をどのように活かしていくかを示さなければ、単に言うことを聞かせて「言われたことだけ」をさせることしかできません。

 あなたが考える「会社の力量」とは何ですか?
 また、あなたがこのような担当者がいる会社の経営者なら、どのような手を打ちますか?