第13号: 崖っぷち企業の社長が攻め込む場所とは?
「大野さん、これから本格的に会社の方向性を変えないといけないんですが…」と、長くお付き合いをさせて頂いている企業の人事責任者からのご相談です。
聞けば、これから人事制度も含めて様々な改革を行うことが決まったものの、社員たちに危機感がなく、自分たちが会社を動かしていく主体性を発揮させる方法を悩んでいるとのことでした。
この数年、ビジネスの前提条件となっていたことが大きく変わってきています。特に、人材に関わる領域に関しては、国の労働政策との兼ね合いも強く、大きな方向転換を迫られています。これまでよしとしてきた慣行、考え方では、事業が成り立たなくなってきているということです。
企業の存続が危ぶまれるからこそ、経営者は方針転換を決意したはずです。ところが、それを決めたことに安堵し、後は現場任せにしてしまう経営者が実に多いです。方針だけ提示して、現場、社員のやる気、研修でなんとかしてと、手元を通過させてしまいます。誰から見ても、経営者が本気で事態を打開しようとしているように見えません。
新たな路線を切り開いていく必要があることは、大半の社員が理解しているはずです。ただ、頭ではわかっていても、それが現実のものをして押し寄せようとする時、人は抵抗します。これまでの習慣や今ある安定した環境が失われることへの恐怖は、得も言われぬものでしょう。
それは、これから多くの混乱や葛藤が生まれることを予見させるものであり、そうやすやすと目の前の安定化された状況を手放していけないと、頑なになる者が増えていくことを意味しています。社員たちは、給与も立場も保証されるわけでもなく、会社からの支援は当てにできないだろうと察します。そのような状況で、わざわざ嫌われ役を買って出る社員がいるでしょうか。とりあえず、黙ったままで、やり過ごしたいと考えるのが常なのではないでしょうか。
一方で、気負った管理者が誤った方向に舵を切ることがあります。自部門の権威を失う脅威を隠すため、社員たちに無理な要求を突き付けていきます。それは、大した策もなく、ただ自部門のプライドや名誉のための指示であり、社員たちを疲弊させています。
誰も責任を取らない、真正面からの取り組みを避けることは衰退を早めることとなります。社員たちは、そうした会社の姿勢や上司たちの様子をよく見た上で、自分の進路を決めていきます。これは先がないと判断すれば、さっさと退職していきます。
車のバッテリーを交換しないといけないと思いながら、「まだ大丈夫」、「あともう少し」と先延ばしにしていると、そのうちエンジンをかけることができなくなるのと同じように、組織も機を逸すれば、手遅れとなってしまいます。
結局、会社の方向を変えなければならない時、社長が先頭に立たなければならないということです。どのような抵抗や反対にあっても、改革を進めていくと腹をくくることでしか道は開けないです。中途半端な言動は、企業活動に停滞を招きます。
改革を推し進めた経営者は、幹部や社員たちと何度も何度も話し合い、意見をぶつけあっています。喧々諤々とやり合う中で、社員たちの意識を事業の本質や自社が重視すべきものへと導いています。その気概は凄まじく、経営者として、何としてでも使命を全うするという勇ましさです。
乗り越えないといけない危ない状況から脱すると思いを固めた時から、あなたは会社の新たな未来を創ると決めたはずです。将来を確かなものにするために、より高いレベルを目指して挑戦に挑みませんか?