第49号:後継者問題に悩まない方法
「経営を引き継ぐ人は、もう決めていますか。」とお聞きすると、「全くそんなこと考えていない」というお答えをなさるのは少数です。あるオーナー系企業の社長は、「子供に継がせる」と決めていました。継がせるとは言ったものの、本人にその意思があるのか気になり、お子さんと会社について話をしたそうです。
すると開口一番、「継ぐわけないじゃん!」と事業継承をきっぱりと断れてしまったそうです。この社長には、親が苦労して作りがあげてきた会社だから継いでくれるだろうという思い込みがあったようですが、はっきりと意思を示されたことに肩を落としていました。
社長も人間ですから、未来永劫に渡り自らが先頭に立ち続けることはできません。自分の後を任せる人について考えるということは、何かしらのきっかけや出来事によって引き起こされます。そして、経営者候補を探し始めることになります。
ところが、社内には「ピン」とくる人材がいないことがあります。傍からみれば優秀で豊富な人材を抱えているように見えても、社長のお眼鏡には適わないため、対象範囲を社外まで広げて人材を探し出そうとしている企業は多いように思われます。
そうした中で、次を託す人材がいる経営者は恵まれているのかもしれません。「今のところ、次の経営者は●●だ」、「すでに後継者指名した」と話してくださる経営者にその理由を伺うと、「あいつには信念がある」、「圧倒的な技術力がある」などといった返答を頂きます。
このように選定した背景をお聞きしていると、社長自身がこれまで経営してきた中で大事にしてきたことが映し出されています。「思い描いた未来を創り人類に幸福を届ける」、「技術力で顧客が儲かるビジネスにする」などと、その会社が成長していく原動力として機能した要素が色濃く表現されています。
確かに、こうした想いを引き継いでいくことはとても素晴らしいことです。ですから、経営を任せていくためには、本当に何が重要なのかを見極めていかなければなりません。少し冷静になり、ビジョンの実現という大きなテーマを背負うのに、今見えている才能の一側面で判断してよいのだろうか…と疑問を持つことが必要なのではないでしょうか。
大多数の経営者が、次の経営者の選定に慎重になるのは、経営能力をきっちりと見極めることに重きを置いているからです。顧客や社員たちを守っていくためにも、長期的に成長し続ける商才を発揮できる人物を選ばなければ、築き上げてきた事業・ブランド・信頼という何もかもを失うことになりかねないからです。
商才という一言で片づけてしまいましたが、俗にいうリーダーシップ、人間性、戦略性、交渉力など経営者に求められる要件は、専門家であっても一言では言い表せないほど多岐に渡ります。自社を発展させていくためには、重要なことは何か、それを遂行するために必要な力とは何かを徹底的に洗い出すことから初めてみてください。
社員たちに物足りなさを感じているのは、経営者になるための経験を積ませていないからです。いざとなって焦るよりも、上記したことを進めていくとおのずと社員たちにさせるべき経験とは何かが見えてくるはずです。
あなたが次の世代に経営を託す上で、最も恐れていることはなんですか?