第39号:個人商店から脱却したい社長がすべきこと

 「うちの会社のお客さんに、僕が担当してくれないなら取引を辞めるよ!とよく言われるんですよ。僕は、こう見えても、技術力に長けていまして…」と照れたように話すシステム系企業の社長。「うちの社員たちは、若くて経験も少ないから細かいことも確認しないと、おかしなことをし始めるので気を抜けないんです。」とベンチャー企業の社長。

 創業社長たちとお話をさせて頂くと、「何から何まで自分でしなければいけない」、「社員たちには解決する力がない」、「僕がなんとかする!」といった言葉をよく耳にします。社長がやることを間違えたら会社は成長しませんよ。とお伝えすると、「だから、自分でやっているんですよ!」と返答されます。

 創業時はとりあえず目の前にあることを、どんどんと処理していかなければならないのは事実です。ですから、多くの社長たちは、「仕事の一部分をお願いしても、中途半端な出来上がりで、結局自分でやってしまった方が早いことに気が付いてしまう。社員たちに成長してほしいと思いつつも、とにかく時間がないから任せることすら難しい」と、毎日の業務の多さと部下の育成の難しさについて語ります。

 こうした話の中で、忙しくと動きまわっている状態がベストだと思っている社長たちがいます。ご自分の作った会社なので、好きなように回せばよいのですが、そういう会社に限って「今、調子いい」ことに安心しきっています。不測の事態は来ないと決めているかのようで、なんとも危なっかしく映ります。 予想だにしない出来事は、起きないことにしたことはありません。けれども、万が一のことは想定しておくことは必要

だと思いますが、社長が何とかしてしまう会社の実情は、「多分、あの人が対応してくれるはず」とか「あの会社に連絡すれば、なんとかなるから大丈夫」と、社長自身がのんきに構えていることが多いように感じています。

もちろん、お会いしている社長たちは、もっと成長させたいと願っています。しかし、このような個人商店的な業務の回し方では、いつまで経っても今の状態から抜けることはできません。当面のやり繰り、日銭が入ってくことへの安心感を得ることで精一杯になってしまいます。だからこそ、会社のステージをもう一段上げる必要があります。

しかし、当の社長たちは、自社の成長とは何かがあいまいになってしまっています。つまり、「会社の成長」と言いますが、意味することはそれぞれ異なります。毎日の業務に没頭するあまり、社長自身が何を目指すべき何かを見失っているということがあります。

売り上げ、組織規模、市場占有率、技術力など、自社における成長を改めて問うてみてください。そして、成長することで何を実現したいと考えているのかを…。どれだけ、生産性を上げたい、効率性を高めたいと願っても、その目的が不明確であれば、必ずといっていいほど不都合が起きます。

簡単に言っていますが、実はこの問いに対する解を描きだすことに苦労している経営者はかなりいます。そこで、順番は逆になりますが、社長が先陣を切って実務をこなす状態から抜け出す見通しを立てることから初めてみてください。

知識や技術の蓄積、ノウハウの共有なしに個人商店からの脱却はありません。