第45号:組織目標の実現を加速させる社員力の鍛え方

 「大野さん、自部門の業務が組織目標とどのように関わっているのか、理解できません。」とある会社の管理職の方から相談されました。聞けば、これまで目の前の仕事をやりくりし、社員たちを動かすことばかり考えていたため、組織成長に貢献する観点が分からないということでした。

 こうした質問が出ることはめったに受けることがないため、その素直さというか前向きさに心動かされました。この質問者が気にしていたことは、「自部門が組織に貢献する仕事ができているか」、「組織貢献のための部下への指導を行うことができるか」という2点について、自分なりの答えが導き出せないことが不安だということでした。

 企業活動を行う中で、これが正解だというはっきりとしたものは存在していません。それでも、多くのビジネスマンが求めている「答え」というのは、しいていうならば、「妥当解」なんだろうと思います。この解に行き着くには、実務経験と同時に、組織や顧客が重視していること、その他の様々な要因を考慮にいれて策を導き出していくことが必要となります。

 このような不安は、「事業目標が、自部門にどの影響するのか」、「組織目標を部下の仕事目標に取り入れる」などといった分析や指示を行いながら、やるべきことの練度を高めていくことが、その解消につながることを示唆していくことが経営者に求められることなのではないでしょうか。

 また、その一方で、忘れてはならないことは、部門メンバーたちを組織目標の達成へ向かわせていくことです。とはいうものの実際は、組織目標が明確に設定されていても、部門目標が共有されていないという話は珍しいことではありません。そのため、業務の優先順位における高低が理解できない、自部門の実績が分からないといったことが起きるのは不思議なことではありません。

 ですから、役員以下管理職に対しては「目標達成に向けた社員の巻き込み施策」の実施を推奨してほしいと願っています。それは、簡単に言ってしまえば、1.事業目標、自部門の目標を伝え、2.意欲を引き出し、3.達成すべきことを決めていくということです。

 お気づきだと思いますが、この3つを求めることは、役員以下管理職の「リーダーシップ」を強化させるということです。経営者が、実現したいこと、組織として進むべき方向性を認識し、日々の業務を通じて部下たちに伝えることができなければ、目標は達成できません。

 この過程で、担当部門の目標と組織目標を結び付ける方法について、思考を深める機会を得ます。自部門が優先して取り組むべき課題の抽出やその実施計画の策定。組織の方向性と異なる見解を持つ社員の対応、部下との信頼関係を構築する道筋などといったように、経営者自身がこれまで培ってきたことと類似する経験を積ませることが、事業目標を加速させることに繋がります。

 言わずもがなですが、目標を上から与えられるだけでは、社員は「やらされている」としか感じません。なんのために、何をすれば、会社に貢献できるのか…と考えることを望んでいる社員たちが、実はかなり存在しています。社員のモチベーションと責任感を高める上でも、目標設定のプロセスに積極的に社員を関わらせていくことは、組織が発展していく上でメリットが大きいと言えます。

 社員たちが加速度に成長していく会社にしていきませんか?