第53号:経営者が押さえるべき、変革時代の着眼点

 年初2本目のコラムも前回に続き、2024年に起きるビジネス環境の変化について書きたいと思います。2024年問題と言えば、運送・物流業界を想定してしまいがちですが、実は、建設業界・医療業界(医師)も本格的に時間外労働の上限規制が適用されます。

 いずれの業界も生活者を支える上で、極めて重要な役割を担っているため、各社の対応に注目が集まる一年となるはずです。特に、その動向を追ってみたいと興味を掻き立てられる点は、これらの業界は、業務上の特性や長年培ってきた商習慣からマンパワー頼りにならざるを得ない構造となっているからです。

 働き方改革関連法は、2019年4月から施行されていますが、上記により時間外労働の上限適用を5年間猶予されてきました。この間に、コロナ禍という想定外の事態に陥ったのは致し方ないですが、それでも、引き伸ばされた5年間をどのように活用したのかが気になるところです。

 というのも、長い年月を積み上げてきた慣行、やり方を変えることは一筋縄ではいかないからです。これまでの枠組みを維持することに執着して、変えるべき点やその目的を見失ってしまう組織を数多くみてきました。ましてや、ここにあげた業界には一過言ある面々が、いらっしゃる印象を受けます。となれば、「変化を阻止する」ことにエネルギーが偏ってしまうことは容易に想像できます。

 さらに、現段階で一定の需要があることが、現状に留まることを求めます。そのため、低賃金あるいは長時間労働というネックがあったとしても、働き手を集めることができれば事業を運営することはできてしまいます。人事担当者には負荷が掛かるでしょうが、働き方に関する経営者の関心度が高まるとは思えません。

 となれば、お茶を濁すような措置で当面を乗り切るというのが、世の常です。一足先に労働時間の上限規制が適用された企業では、上司からの指示の如何に関わらず、業務の持ち帰りやタイムカード打刻後の残業などというような行為が頻発したことが話題となりました。

 このように、時間内に業務を終わらせる仕組みを作るよりも、これまでのやり方でどうやって乗り切るかという方に人は流されます。だからこそ、猶予をもらった業界の方々には、的を射た対応で事態の打開を目指してほしいと願っています。

 「第25号:経営者の盲点だった?!人件費削減の未来」のコラムにも書いていますが、今までに作り上げてきたビジネスモデルを成立させる前提条件は、すでに崩壊しています。

 経営者は、「そんなこと分かっている」というかもしれませんが、敢えて言わせてください。ビジネスの世界は、「人権時代」に移行しています。労働力は「消費」する時代から「資産化」する時代へと大転換しています。世の中の要請が変わるということは、それに対応できなければ「衰退」していくほかに道はないのではないでしょうか。

 経営者あるいは人事部門の責任者として、あなたがすべきことは明確になっていますか?

 あなたの会社の経営幹部は、こうした事業環境の変化に気がついていますか?誰が、どのように受け止めているか知っていますか?また、彼らはこの先どのようにすべきかを描いていますか?