第67号:取引先から考える自社の将来価値
コンサルタントの先輩方と久しぶりにお話をさせて頂く機会がありました。「自社の商品の良さを分かってもらえない」と訴える若手コンサルタントに対して、「価値が分からなければ、客は買わない」というアドバイスが耳に入ってきました。
人材に関わる仕事に長年携わっていますが、大手企業は過去の取引がものをいうところがあります。さらに加えるならば、両社には相性があると感じています。親和性と表現した方が、より適しているのかもしれません。例えば、会社の雰囲気が似ている、仕事の進め方やタイミングが合う、仕事の成果や結果に対する考え方が似ている、というような具合です。
担当者のアサインから考えれば、仕事の難易度、クライアント企業のレベル、顧客側の担当者との相性などを考慮します。このように実務的に見ても、自社のレベルに見合った顧客と取引することは必然です。誤解なきように補足しておきますが、一段上のレベルの企業から受注した案件はなんとしてでもやり遂げるのは当然のことです。
上述した「価値」を理解して頂くという一言には、提供する側として顧客に「訴求すべきこと」に焦点を当てることを説いていると思います。極めて重要なことではありますが、一方で、「提供する価値」を見出せる顧客と付き合っているのかと自問することに意義はないでしょうか。
今、顧客に提供している価値は、過去の産物です。大手企業は過去の取引関係を重視しがちだ、と上述しました。これまでのやり方や関係性の中に染まり切っているようであれば、どちらの企業も成長性に乏しいことは言わずもがなです。
流行っていることに価値を置く、必要なものを安く手に入れたい、自社が要求することに従ってほしい、この辺りは多くの担当者が重視する「お得感」のようなものです。その辺に転がっている物を安く、手間なく手に入れることが最も効率的です。
提供価値というのは、打てば響くものでもなく、受け手がその「値打ち」を嗅ぎ分ける臭覚を持っているかも重要なのではないかと考えています。敢えて臭覚という言い方をしていますが、日本企業は他社の真似をすることは得意です。そこには、嗅ぎ分ける力なんて全く必要はありません。
似たような製品やサービスを提供している企業を探せばいいだけです。そこに、一体どのような価値を求めているのか、正直なところ分かりかねます。つまり、価値を提供する側、される側ともに、生き残りをかけて切磋琢磨している集団同士でなければ見えない世界があるということです。
お金が有り余っている企業で見かける終わりのないプロジェクト、結局、顧客にサービスを提供するどころか、利益を吸い上げているだけです。そこに気がつけないのが、担当者たちです。
つまり、会社の将来や未来を築く上で、付き合うべき企業を選定することができるのは経営者や部門を率いるトップです。どんな優れた商品もサービスも、永遠に輝き続けることはありません。自社が付き合うべき取引先の「真価」を読めることは、自社の将来価値を上げることに繋がるのではないでしょうか。