第66号:経営判断の幅を広げる外部人脈との付き合い方

 「社会と人」、「企業と人材」に関心を持った仲間とのつながりを大切にしています。以前のコラム、「第23号: 勝手に会社の価値を上げてくる社員はいますか?」でも触れていますが、弊社の企画に賛同して集まってくださる貴重なお仲間たちです。単なる飲み仲間から、もう一歩踏み込んだ関係性を築き上げようとしています。

 世の中では、リスキリングの推奨と普及が叫ばれていますが、思った以上に効果が得られていないという声が聞こえてきます。しかし、資格取得、勉強会への参加といった自己研鑽を通じて、仕事の質を高めようと努めている方々は企業が把握している以上に存在しているのではないかと思っています。

 目的は人それぞれだと思いますが、仕事という基軸が共通しているため、似たような悩みや課題を持っている、興味や関心のある話題が近しいなど、参加者同士が親しくなる共通項が揃っています。そこでは、情報収集・交換、目標への共感、利害関係のない安心感といったメリットを享受することができます。

 そういった利益を得るには、勉強会後の一杯に参加し、飲みながら楽しく親交を深めていくことが最も手っ取り早い方法です。ただし、勉強の場がなくなれば、時間の経過とともに、参加者が減り、新鮮さが薄れてしまうことは仕方がありません。特に、退職、転職、異動などにより関心事が変わるため、フェイドアウトしていく人が増えるのは当然のことです。

 そうした経験を繰り返すたびにどこか寂しさを覚えることがあり、立場、経歴、年齢、性別も異なるけれど、仕事、人生、社会に対する考えや思いをもっている仲間とは、お互いに刺激を与えあうことができる関係性を維持し続けたいと願っています。

 それは、仲間たちのお人柄にも起因することもありますが、もう一つには、駆け出し経営者として自問する機会を頂くことができるからです。他者の経験してきた領域、常識や正義、価値観に照らし合わせた時、自分ならば何ができるのか、どのような視点から事象を捉えればよいかを問うことができるからです。

 企業社会の中にいると立場が高い人、影響力を持っている人、声が大きい人の声に耳を傾けてしまいがちです。その人たちが言っていることが本当に正しいのか、検証されることもなく、その見解に賛同することが是とされてしまうことがあります。

 逆から考えれば、そうした組織の常識に染まりきっていると、聞いている振りや見て見ぬふりする習慣を持っている社員たちの本音、物事の本質に触れる機会が得られなくなります。それは、組織を動かしていく立場にいる人にとっては、意思決定の判断材料がないに等しいことです。

 また、社外人脈を構築する中で改めて認識させられることは、人にはそれぞれの事情があるということです。1人で抱え込んでいる人、じっと耐え忍んでいる人、家族にも言えないけど、死ぬほど苦しいともがいている人がいます。会社には言えないけど、言っていないけどという状況の中で葛藤している人たちがいます。

 個別の案件や事情だからとさっさと片付けようとするのは、新たなビジネス機会の創出、人材施策などといった事業につながるチャンスを逃す行為のように感じます。社員一人ひとりの課題や問題を把握することは、社員の人生を知ることにもなります。さらには、社員の抱えている事情を理解することは、社会課題との接点を増やすことにもなります。

 事業は社会があるから成立し、事業があるから社会があるわけではありません。同じように、仕事のための人生ではなく、人生の一部が仕事です。つまり、社会と企業とのつながり、人生と仕事の関係を無視し続けてしまうは人材の財産としての価値を見出せないダメ上司へと成り下がることを意味するのではないかと考えています。

 最後になりますが、こうした企画を開催すると仲間が喜んでくれることが何よりも嬉しく、ありがたいことです。職場であれば、下の者がやるのが当たり前です。だから、お礼なんて言われません。しかし、外部の方々はお礼を言ってくれます(笑)。経営サイドとしてできることは、部下に日ごろの感謝やお礼を伝えていくべきだと確信しています。

 上司、同期、家族、友達以外にあなたを成長させる仲間はいますか?