第3号:社長が考えるべき、人材の資産価値を高める人事評価
「人事評価は、どうしてこんなに難しいんでしょうか。あるコンサルタントに相談したら、結局人事評価というのは、最後は社長次第だと言われてしまいまして、本当にそうなのでしょうか?」ある社長とお話をしている中で、質問されました。
「実は、評価結果について腑に落ちない現象が起きています。管理職から出てくる評価結果は、優秀な社員が全く評価されていない。仕事の質が高い人が低い評価となり、普通かそれ以下の社員の結果が高く評価されています。これっておかしいですよね?それを最後に調整するのは、社長だと言われてしまうと、いつまで経っても問題は解決されませんよね?」ということでした。
「最後は社長の決めですから…」と人事評価の結果をすり合わせする場面でよく使われる一言で、コンサルタントが発した意図はよくわかります。しかし、この社長はもっと上位概念から人事評価を捉える必要があるのではないかと問題提起しています。
一定数以上の社員を雇っていると、メンバーに目が行き届かなくなるため人事評価を入れたいという要望が増えます。人事評価で悩んでいたとある会社の例です。マネジャーに部下の評価結果の提出を求めた際に、社長はその結果に絶句したそうです。仕事らしい仕事をしていないにも関わらず、評価結果は部門内1位の社員。周りからの信頼や評判も芳しくありませんが、マネジャーは、「部門目標を達成するために、私の指示に従った。他の社員たちは、どうでもいいことばかり考えていて、効率が悪く、部門への貢献度が低い。だから、評価は高くなるのは当然です。」と、その理由を話しました。それ聞いた社長は、開いた口が塞がらなかったそうです。
そこで、この会社がとった対策は、マネジャー陣に評価項目を検討させながら、評価についての理解を促進させようとしました。集まられたマネジャーは、評価すべき項目について話し合いを進めていきます。しかし、いつの間にか各部門の評価結果のバランスがどうすればとれるか、部下から文句を言われない評価とは何か、評価結果の平均が〇点になるためには…と評価そのものよりも、運用方法、結果の平等性、実施のスムーズさに気が向き、話し合いの結論が出せませんでした。
厳しい言い方かもしれませんが、はっきり言って時間の無駄です。マネジャー陣を育てようとする意図は十分に伝わりますが、そもそも評価に対する知見を持たない人を集め、評価すべきことを検討させても有効な結果を見出すのは難しいと思います。
このように、人事評価は、その目的、意図、そして評価項目を評価者が理解していないと運用は非常に難しくなります。冒頭に取り上げた人事評価に対する疑問を投げた社長の例は、評価者の評価に対する理解不足、評価能力の低さから生じる人材の未活用や事業推進の妨げが発生することに懸念を抱いたということです。
事業成長の速度が著しい会社の社長は、人事評価制度を入れることに意欲的です。それは、より成果を上げる社員を評価しなければ、組織が発展しないことをよく理解しているからです。とはいうものの、評価の仕組みなどのイメージが付きにくいため、他社で実施していることやコンサルタントの言うことを鵜呑みにして、つまずいてしまうことが多いのも事実です。
評価の仕組みを入れたのはいいけれど、想定したこととは異なる。その結果、「最後の最後は社長が、評価したい人を上げればいいでしょ。」と、俗にいう「好き嫌い人事」や「鉛筆なめる」という事象が起きています。こうした人事評価を行いたいと思っているならそれでよいのですが、半期ないし年に1回こうした作業を行うのは、本当に意味があるのかと“疑問”を抱くことができるのであれば、人事評価制度について改めて考えることをお勧めします。
会社はどこを目指していますか?そのために、どんな人が必要ですか?どんな言動が、事業成長に貢献しますか?どのような人事評価制度を目指しますか?評価結果をどのように活用しますか?