第34号:経営者の目標を必達するための人事評価

「ダメな奴は何をしても駄目ですよね?」、「目標以外の仕事をしない部下がいて、困っています」、「部下が仕事に関係がある目標をきちんと書けるか心配」、「部下全員の成果を見ることができない」など、評価者研修を受講されている管理・監督者の方々から聞こえてくる声です。

 こうした研修では、技術を学ぶことが中心となります。評価者が人事評価とそれに付随する面談等を実施できるようになることが、その狙いです。ところが、目的にそって研修を進めていく中で、上述したような会話をよく耳にします。そのたびに、評価者つまり、管理・監督者層が各々の仕事をどのように捉えているのかと疑問を投げかけたくなります。

 研修の狙いに沿った意見だと分かった上で、敢えて言わせて頂くならば、「日常の業務を回す」、「評価すること」ばかりに意識が向かいすぎていないかと感じています。お伝えしたい観点は、以前投稿したコラム、「第24号:頼りない上司と若者の未来」でも書いていますが、管理職のマネジメント力です。

 上司の力量というのは、業務遂行能力、やる気、向上心などといった部下一人ひとりに関わること、部門全体の成果、職場の雰囲気などに関わることと、その影響の範囲はとても広くなります。それにも関わらず、これまでの先輩社員的な立ち位置から抜け出すことができず、与えられた業務を管理することで満足しているように見えます。

 ある監督者の方が、困ったような表情で「部門目標を聞いたことがありません。」そのため、部下の目標を設定できないと訴えてきました。このように、「自分の目標がない」、「部下が着いてこない」と内心焦っている管理・監督者は意外かもしれませんが多数いらっしゃいます。自部門やチームの目標設定、方向性の決定、部下との関係構築といった力が足りていないことがよく分かります。

 さて、このように上位者から目標の提示がないというケースはよくあります。そもそも上位者にビジョンがないということも考えらますし、部下の自主性を大切にしているのかもしれません。理由はどうあれ、面倒だからと手を付けない上司陣がそれなりに存在していることは確かです。

 人事部門がどれだけ力を入れて、人事評価、目標設定に関する技術を社員たちに付与しても、幹部社員が機能していなければ、それは部分最適となります。特に、昨今一般化している目標管理を活用した評価は、会社目標、部門目標、個人目標のつながりなければ、組織発展に向けた貢献度合いが見えにくく、生産性を下げる要因となることもあります。

 では、このような状態に陥っている時に、経営者や人事責任者としてあなたはどのような施策を行いますか?一番初めに出てきやすい策は、研修実施ですが、幹部社員たちがすんなりと参加するでしょうか。外資系企業と比較すると日本企業の経営層の研修実施率は、非常に低いです。また、幹部社員たちのプライドもあります。「何でも知っている、何でも分かっている、何でもできる」かのように、幹部社員が振舞うこともあるでしょうし、社員たちもそのように認識せざるを得ないこともあります。

 とりわけ、人事に関することは、過去に学んでおり経験値もあるため、改めて知識やスキルの習得に関わる研修などに参加することは拒絶されがちです。そうなると、研修という対策では解決は難しいかもしれません。その他に、できそうなことはないでしょうか?

 人事に関することは、恰も正解があるかのように見えます。それは、便利ではありますが、自社の制度導入の目的や背景を忘れさせてしまうことがあります。人事評価制度は、評価のための道具ではありません。経営目標を達成するためには、どのような成果や結果を生み出すことを求めていくかが重要です。