第35号:できない奴ほど、忙しいふりをする

 「私、それなりに忙しいんですよ。」と日程調整をしている際に、お打ち合わせの相手の方から出てきた一言です。自分の予定を話し始め、こちらの予定や都合は一切関係ないかのようにしゃべり続けます。話し半分で聞くつもりが、いつの間か「話す必要のないことを、わざわざ訴えかける人」の特徴について考える時間となっていました。あなたの周りにも、忙しいアピールをする人はいませんか?

 社員に「最近、調子はどう?」と声を掛けて、「暇です」と返答されるのは困りものです。とはいうものの、忙しさを周囲に見せつけるかのように、「仕事しています!」「忙しいです!」とアピールされるもの、これもまた困りものです。自らができる社員だと宣伝する代表的な行為には、「会議や打ち合わせ中に、電話対応のために席を離れる」、「随分前から決まっていた予定にも関わらず、急ぎの案件が入ったと遅れてくる」というのがあります。

 もちろん、突発的にこうしたことが起きることもありますが、これを頻繁に繰り返すことを指しています。この手の社員たちは、忙しく動き回っている自分に酔っているきらいがあります。「予定は入っているにも関わらず、顧客から呼び出しされるのは、自分が必要とされているからだ」とか、「急な案件に対応できるのは、自分しかいない」と自負していることがあります。

 冷静に考えれば、会議の中座や予定に遅れてくるのは、マナー違反です。また、他者の生産性も大きく下げてしまう迷惑行為です。しかしながら、そうした周囲への配慮不足や効率の悪さを「理解できないこと」が、できない奴の特徴その1です。

 特徴その2は、「スケジュール管理」ができないことです。予定が入っている日に、用事が入る、入れるというのは、自分の業務を調整することができていないということです。つまり、立てた予定を守るために、準備や段取りを組むことができません。よく「お客さんや取引先から急な連絡が、入るのは仕方がない」と開き直ったように話す方がおりますが、それは、急な連絡が入ることを予測した対処を取れないことの言い訳でしかありません。

 この2つの特徴は、業務を自分の目線で見て、今できることだけに注力する人がやりがちなことです。本人にとってみれば、やれることを懸命にやっていると感じてしまうのは、致し方ないのかもしれません。こうした社員の行動を責めるのは簡単ですが、このような状態に陥ってしまう要因にも目を向ける必要があります。よくあるのが、上司もまた、できない奴と同じような特徴を持っているということです。

 今時、どこの職場も「暇」ではありません。ところが、できない系の上司は、メンバーが忙しく時間を合わせて打ち合わせや会議の時間を取っているにも関わらず、離席を容認してしまいます。それどころか、自分が席を立つことさえあります。

 驚くのはここからですが、部下が研修に参加していることを忘れて連絡を入れてくることもあります。顧客からの対応や急な依頼への対処を指示するために、電話してきます。時には、悪びれることなく、人事部門に連絡してくる上司もいるくらいです。業務の都合で連絡を入れているのに、何が悪いのか疑問を頂く方がいらしたら、「あれ?もしかして自分も・・・」と疑ってかかった方がよいのではないでしょうか?

 詰まるところ、できない奴というのは、「考えない」で仕事する人のことです。行き当たりばったり手をつけ、ただただ経営資源を無駄に浪費していることに、気がつくことができません。とにかく、業務を捌くことが仕事だと勘違いし、満足してしまう人達です。

 さて、あなたは、こうした事態に遭遇したら、どのような対策を取りますか?

 また、「何について考えれば」できる奴になりますか?