第44号:勝ち続ける会社への一手

 「うちの社員たちさ、ものすごく優秀なんだよ。だけど、最近さ、社員たちが意志を持ち始めて困っているんだよ。」と、経営者仲間との飲んでいる時に出てきた一言です。この社長の話を聞きながら、ワクワクする気持ちを押さえることで精いっぱいとなりました。

 というのも、この15~16年位、意志を持った社員たちに出会うことが極端に減ってしまったからです。以前は、研修中のディスカッションですら、成果を得るために本気で喧嘩しているかのような言い合いを始める社員たちがいました。

 彼らの議論に関心させられたのは、勝ちにこだわることです。与えられているテーマに没頭し、自分事として捉え、どうすれば会社が発展していくかを練っていきます。その中で、賛成できる点、受け入れることができないことを徹底的に討議して、成果を獲得するという気概を示していました。

 ところが、最近は、指示されたからやっているという受け身の姿勢が強く、体裁を整えて済ませることが多くなりました。議論の進め方、メンバーの意見を引き出し、その意見をきれいにまとめることはとても上手です。言い方は悪いですが、「それだけ」なんです。

 何が言いたいかのかというと、十数年前の社員たちには「会社に貢献したい」という意欲が強くあった。一方で、現在は「言われたことはやりますが、無理はしません」というように、その取り組み姿勢が大きく変わっているように感じています。

 あの頃の社員たちは、すごかったと懐かしみたいわけではありません。ただ、現状に、なんとも言えない違和感を覚えています。「他律的」、「手法ばかりが先行する」、「内容や精度へのこだわりが弱い」、というのは、社員が「会社からサービスを受け取る立場」に成り下がってしまった、もしくは、「傍観者にさせてしまった」のではないか…と考えさせられます。

 様々な要因があることはもちろん理解した上で、マネジメントの1つの観点として考えて頂きたいことです。社員たちから「上司が××してくれない」、「会社に××がない」、「どうせ××になる」といったような発言が出てくるのは、会社に対する依存心が強まっている可能性がありませんか。あるいは、会社への要求ばかりで、社員たちが「自分たちに求められること」をないがしろにしているということはありませんか。

 会社によって人を動かして成果を上げる方法は、異なります。貢献心の強い時代を「意志を持たせる会社」、依存心の生みやすい時代を「消費者にする会社」と仮定して考えてみしょう。前者は、経営者が実現したいことと社員たちの意志を合致させるのに、労を割きます。すべきことさえ合致すれば、自走する集団になります。

 それとは逆に、業務に対する知識、考え方、細かな日常のケアなど多岐に渡りサポートを提供する会社が後者です。一度仕組みを作ってしまえば、言われたことはできる集団となります。

 経営者としてのビジョン、方向性を強く求められるのは、「意志を持たせる会社」です。一方で、事業の仕組み化に重きを置き、人事施策を軽視しているのが「消費者にする会社」です。

 今、自社がどのような状態にあり、目指すべきところへと向かうにあたり、最善の体制なのかと確認することが必要です。そして、ビジネス環境に即した組織に変えていかなければ、事業は衰退していきます。

 あなたの会社は、現状はいかがでしょうか。
 そして、自社の事業を推し進めるために、どのような集団になるべきだと思っています?