第104号:沖縄で人事制度を考える意味

 先日、沖縄県今帰仁村に行ってきました。ご存じの方も多いと思いますが、USJ、西武園ゆうえんち、丸亀製麺を再生させた敏腕マーケターが手掛けるテーマパークが、7月25日にオープンします。今、現地はどのようになっているのか気になり、建設中の施設周辺を見に行ってきました。

 このプロジェクトに興味を持ったのは、「地域創生」、「持続可能な観光の推進」、「沖縄の新たな魅力の発信」を目的としていることです。どれもどこかで聞いたことがあるようなフレーズのように感じますが、彼が手掛けると、何が起きるのだろうかと好奇心がくすぐられました。 

 話は大きく変わりますが、経営者が人事制度を入れたい、見直したいと考えるきっかけは、「事業の成長・拡大期」、「人材マネジメント上の問題」、「M&Aなどの後」、「事業環境の変化」です。企業が成長し続けるためには、報酬体系の明確化、社員の評価に対する公平性や透明性の確保が必要と考えるからです。

 確かに、制度を入れることにより、社員を一定の枠組みに従って動かすことが可能となります。そのため、経営者の中には、「人に関することは、制度を作れば全てが丸く収まる」と誤った認識を持たれる方もいます。あまり深く悩まずに、とりあえず、コンサルタントに依頼して制度を作ってしまう企業は数多くあります。

 ところが、外部に依頼したことで痛い目に合っている経営者がいます。経営者が人事制度を理解していないこともその要因となりますが、加えて、コンサルタントや窓口社員の事業内容や実務面での知識・経験が不足しているために、評価軸として使えないという現象が起こることがあります。

 人事が入っているのに、そんなことあるのかと思うかもしれませんが、人事部門の目線と経営者の目線が合致することは稀です。逆の言い方をすれば、事業に関しては経営者目線、労務的な観点から人事、実務面は現場の目線の軸が求められるということです。

 ひと言で人事制度と言いますが、制度を入れば全てが解決するというのは、妄想であり、現実はそんなに簡単なものではありません。人事制度の難しさは、評価指標の設定、公平さの確保、にあります。運用面での課題が多く、社員から納得感を得られないだけなく、不満や不公平感を生むことにも繋がります。

 ですから経営者の皆さんには、再考して頂きたいことがあります。あまり大きな声では言えませんが、売上を上げることが展望だと本気で思っている経営者は少なくありません。恐らく、売り上げ出して何をしたいのかということを考える時間が少なかったからでしょう。今からでも遅くはありません、事業の方向性と評価軸の関連性を見出してください。

 冒頭のプロジェクトの話に戻しましょう。ジャングリアという観光施設は、単に利益を上げることを目指しているわけではなく、そのねらいは、「地域創生」、「持続可能な観光の推進」、「沖縄の新たな魅力の発信」です。

 これらを実現するための仕掛けは、経営者が先頭に立って行っていくことになりますが、それを実務に落とし込んでいくのは社員です。やり方や手法はさまざまでしょうが、目的に照らし合わせた業務設計と遂行することとなれば、評価すべき言動や結果がこれまでとは比べものにならないほど、理解しやすいものとなります。

 自社が何を目指すかによって、社員に求める能力・結果は変わります。現状維持を求める企業に、斬新さや革新さは邪魔になります。時代を切り開きたい企業には、時代を読み解く力、現状を打破する力が必要となります。というように、組織として向かう先がはっきりとしていなければ、何に力を入れればよいかが明らかになりません。

 事業のねらいを明確にすることは、それを成し得るために、社員たちに求めることや期待することを打ち出すことになります。端的に言えば、事業成功のために「社員にしてほしい」ことが、鮮明になるということです。いちいち指示を出さなくても、それを見せれば、社員たちが「何を頑張ればよいのか」が分かる物、それが評価軸なのではないでしょうか。

 あなたは、どこに行けば人と組織を冷静に見つめることができますか?