第10号:チームビルディングが思ったほど成果を生み出せない本当の理由

 「社員たちが仲良くしてくれれば、うちの会社はもっと成長できるはずなんですよ」と、コンサルティング途中で、社員たちへの期待を込めた社長の一言です。

 聞けば、社内での集まりがあっても社員同士で業務に関する情報交換をしないことに、不満を感じているということでした。社長いわく、各部門の取り組み事例、成功体験、失敗体験をもっと話し合ってくれれば、事業が伸びるのではないかとのことでした。

 部門内や部門間連携を強化させたいと、チームビルディング研修やワークショップなどを実施したことがある会社も多いかと思います。ゲームなどを上手く活用しながら、横や縦とのつながりを強めていくことを狙いとしており、多くの人が楽しめるように工夫されています。

 皆が一堂に会し時間を共有する。その場はものすごく盛り上がり、社員からの評判は上々となります。ところが、時間が経てば、「そんなこともあったよね」程度の温度感に下がってしまいます。こうしたイベント後の調査で耳にするのは、「研修の時だけのつながりだった」、「会社で友達ができた」、「愚痴を言い合う仲間が増えた」という意見が多く、「あの瞬間の活気を継続できない」、「チームになっていない」という課題です。

 限られた時間内で実施している場合、チームを形成するよりも「仲間を知る」ことに重きが置かれがちとなります。社内に知り合いを増やし、それを事業に活かすまでの落とし込みまで至らなかったという職場が多いようです。

 職場で親しい関係を築き上げることは、大切なことです。しかし、最も重要なことは、その関係をさらに発展させて、成果を上げる集団に築き上げていくことです。ところが、現状は先に示したように、多くはその場だけの関わりで終わってしまいます。

 このように「その場だけの関わり」からチームとして動きだしていくには、職場で人を動かしていく管理職や中心的な役割を担っている社員たちの力が重要となります。社員の力を集結させていくには、向かうべき方向を定める必要があります。そして、その達成を目指すための道筋を示さなければ、敢えて協力関係を作ることの意味を見出すことは難しいと言えます。ですから、その方向性を見出す管理職たちの役割は大きなものとなります。

 サッカーや野球などチームで行うスポーツを見るとよく分かりますが、勝つことにこだわるチーム、個人技に特化するチーム、負けないことに注力するチーム、といったように集団にはそれぞれの特性があります。それは、なんとなく出来上がったものではなく、監督が目指すべきゴールを実現するために決めた戦い方です。

 当然、「勝つため」と「負けないため」では、選手たちの心もちから戦い方まで何もかもが違うことは、想像に難くないでしょう。言うまでもなく、チームビルディングは、個人戦から団体戦へとその戦い方に変えていくことです。

 ですから、チームは何を目指し、どこへ向かおうとしているのかを共有できなければ、メンバーたちは自ずと個人技でよしとしてしまいます。そのため、職場では経営者が決定した到達点に向けて、管理職がどのようにメンバーを率いていくかが問われるわけです。

 社長から「ああしろ」、「こおしろ」と指示されたことをこなすことに注力していれば、職場づくりにまで意識は向かいません。会社目標を実現するなどと社長の言葉をそのまま伝えているだけでは、職場や部門のレベルを高めていくことができません。

 管理職や会社運営の中心となる社員たちが、一段高い視点から職場を見据えることがチーム築き上げていくためには必要不可欠です。管理職に意志を持たせる関わり方を考えてみませんか?