第17号:経営者がやる気をなくしたらダメですか?
「大野さん、ここまでがむしゃらに働いてきたから、もうこれ以上無理してまで仕事したくないんですよ。気ままに、のらりくらりとやっていくことができれば最高だと思っています。何事もなく、引退したいんですよ。」と、コンサルティング中にある経営者が発した一言です。
「会社を作ってから生活のため、社員のためにと何日も徹夜して必死に仕事をしてきた。そのお陰で、今、会社は安定して経営できている。ここからもう少し頑張ればと思うこともあるけど、もうあの頃みたいに頑張る気力なんて、どこにも残っていない」と少し遠い目をしながら、心境を語って頂きました。
会社を立ち上げて、自分を殺しながら仕事をしてきたことや苦しかった時のことをとつとつと語る様子は、ご自身の職業人生を振り返りながら、次のステージへと気持ちをどのように持っていけばよいのか悩んでいるように映りました。
誤解して頂きたくないのは、今後すべきことやしたいことがあるからこそ、弊社のコンサルティングを受けているということです。第一線に立ち、社員を率いて会社を切り盛りしてきた。しかし、そのやり方に限界を感じているからこそ、人を育て、よりより会社にしていきたいという思いがあるわけです。
人材の資産価値を高めるという新たなテーマに取り掛かるわけですから、知らないことも多くでしょうし、考えもしなかったことと向き合うこともあります。また、経験や感覚として把握していることを、言語化することもあります。
やっとことがないことに取り組むということは、その難しさや苦痛を伴うことがあります。それに耐えきれず、言い訳が止まらなくなる、攻撃的になる、考えられなくなるといった症状のようなものがでる方もいます。でもそれは、本当に一過性のもので、どのように受け止めればよいか分からなくなっていることが大半です。
「会社をよりよくしたい」「社員に幸せになってほしい」「業界をリードする会社にしたい」などといった、思いを持って臨んだことでも、いざ、やり始めてみたら予想外のことが起きたり、無知であることに気がついてしまったり…と、行動に移せない、気持ちがついていかない時があるということです。そんなことは人間ですからあって当然なんです。
「経営者なのに…」と自分に負荷をかけてみたり、「俺は無能だから…」と自虐的になってみたり、「仕事が忙しい」といらぬ言い訳をしても、やっぱり、一歩も動けない時は誰にだってあることです。
誰に何を言われようと、自分の会社を守るのは自分しかいないし、
その守り方が分からず、悩んだり、落ち込んだり、逃げ出したくなるなんて、普通のことなんです。
だから、安心してください。モチベーションが下がってしまった自分を認めてあげればいいじゃないですか。そのような状況は、いつまでも続くわけではありません。できない、やれないと立ち止まってしまった時は、次の手を打つ準備をしていると思えばいいんです。準備中だから休んでもいい、愚痴を言っていい、社員に相談してもいい、普段自分が躊躇してしまうことをすればいいんです。
こうした仕込みが、経営に対する考え方を固めたり、物事の本質へと思考を深めたり、視野を広げたりと、今までの経験や考え方と今後を結びつける役割を担ってくれることもあります。ですから、経営者には「転んでもタダでは起きない」ように努めることが、大事なのではないでしょうか。
あなたの行動にブレーキを掛けてしまうものは何ですか?
そのブレーキを緩めるために、あなたが知っておいた方がよい知識や考え方、行動はありますか?
そして、あなたに勇気や助言を与えてくれる仲間はいますか?