第47号:遊びのつもりだったけど、本気になってしまった
「大野さん、僕はこの本部の最大のネックは、喧嘩すらできないことだと思っています。」とあるメーカーの部長が、本部内のチームビルディングのコンサルティング中に発した言葉です。詳しく話をお聞きすると、「確かに社員同士の連携は悪いけど、個人個人は自分の仕事にプライドを持って仕事をしている。そのプライドを貫けばいんだと思います。」
自分の仕事に対するプライドをぶつけ合うことが、組織としてよい成果に結びつくはずだということでした。実はこの部長、部長陣の中でも普段は、目立つ存在ではないそうです。数十人の本部メンバーたちが揃っている場で、自分の意見を発したことにその場にいた全員が驚いたそうです。
チームビルディングの面白さは、参加者の仕事に対する思い、考え、姿勢が如実になることではないでしょうか。強い集団を作ることを目的として集まった際に、メンバーたちの一人ひとりの言動そのものが、その方をとてもよく表しています。
「他者のことを理解しようと努める人」、「自分のことを分かって欲しいと懸命に説明する人」、「なんでこんなことやっているんだよ。という思いが態度に出てしまっている人」、「とりあえず、楽しんでいる振りをする人」など、実に多様です。この振る舞いは、チームビルディングの場で突然出てきたものではなく、日ごろの職場での一面と似通ったものであることが大半です。
さて、職場での人間関係構築が難しくなっている昨今ですが、チームビルディングはまだまだレクレーショ的な色彩が強く、成果を上げる集団作りを目指す手段に至っていない企業が多いのではないでしょうか。体育大会、●●祭、社員旅行などが大々的に実施されてきた頃を懐かしむ、お父様方が「こんなのやってみたら」と部下に指示を出し、実施に至る企業もあります。
ですから、強い集団を作るためという「目的」よりも、「日ごろの労をねぎらう」、「部門内人脈の形成」ということがその趣旨となることが現状では多いように感じています。それはそれでよいとは思いますが、一方で本質的な観点から「よい集団/強いチーム作り」に取り掛かることが必要なのではないでしょうか。
チームビルディングに携わっていると、「周りの人の仕事について聞くことができてよかった」という感想をたくさん頂きます。逆に言ってしまえば、他者の仕事も知らないでよく仕事できるなーと違う意味で感心してしまいます。普通に考えれば、自分が担当している業務には前工程も後工程もありますし、その他の関係も考慮に入れて仕事の質を担保していきます。
ところが、担当業務にしか興味を持たない社員たちは、ただただ作業を繰り返しているだけの存在になっています。それこそ、仕事での充実感も満足感も得られないでしょうし、ましてや、組織に対する貢献心が醸成されるとは思えません。それにも拘わらず、「モチベーションだの、やる気を出すための施策を!」と息巻くのは、やはり的を射ていないと思わざるを得ません。
スポーツを観戦しているとよく分かりますが、結局、強いチームは全員がスター選手である必要がないということです。メンバーの「技術(能力)と経験の総和」と、「個人の総和を超えるチームの総和」が高い方が、勝利を手にする可能性が圧倒的に高まります。そんなことは、言われなくても大抵の人は知っています。
知っていることをやらないのは、あなたの会社には圧倒的な勝利は必要ないということでしょうか(笑)?