第99号:永続企業に成長するための準備
あけましておめでとうございます。本年も、「未来の眼」をどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、年末年始などの休暇を活用して、企業の未来に関する情報収集や思考を深めているという方もいらっしゃると思います。ゆったりとした時間を活かして、日々の業務に追われる中で見過ごしがちな課題や可能性に目を向けるとともに、自社が永続的に発展していくことができるかという観点で点検してみてはいかがでしょうか。
というのも昨年(2024年)は、これまでにないほどの不祥事が露呈した年でした。個人情報の流出、企業トップのセクハラ、社員の横領や窃盗、強盗殺人未遂、健康被害、検査データの改ざん、などというようにまるで日本の産業界がダメ出しをされているかのような情勢となりました。
まさか「あの会社がこんなことを!」と驚かされ、顧客は何を信じればよいのか分からない状態に陥ったと思います。社員や現場の倫理観の欠如と一括りにしてしまえば、それで終わりですが、これほど社会を揺るがすような事例を一言で片づけてしまうのは、もったいないことです。
昨年発生した事件で、自社でも起こりうる可能性が高いことは何か、それに遭遇したらどのように対処するのか、原因となり得ることはなにかと思考を巡らせてみてください。ある経営者は、「社員を信頼しているから、うちではこういう問題は起きない」と言いました。別の経営者は、「社員や現場を信頼している。だから、何かがあった時に彼らを疑わなくてもいいように、性悪説で管理している。何か起きる前に、対処したい」と話していました。
事件を起こした企業の経営者の中には、「現場に対する信頼」や「過去の実績に自信・安心感」があったのではないでしょうか。事件や事故の予測を立てることは、規制力を働かせることにも繋がってしまいます。そのため、問題が起こりそうな事象を予期しても、「利益のために」と黙認して物事を推し進めてしまったが故に事故を発生させた例はあまたにあります。
これらの事件は、自社の組織づくりを進めていく上で、強みの醸成とその功罪を教えてくれるのではないでしょうか。強い組織は他社には真似できない仕掛け、仕組みを構築して事業の優位性を発揮できるようにしています。その優位性は、自社らしさを築き上げ、強化させて上でも非常に役立ちます。
ところが、その優位性や出来上がった体質は、コインの裏と表のような関係があります。社員に信頼を寄せる組織が人に裏切られる、合理性が高い組織が無駄だらけになるというように、ジレンマを抱えてしまいます。それが起こりうることは、誰も理解していることですが、いざ我がことになるとそれらを見なかったことにしてしまうのはなぜなのでしょうか。
2025年は、トランプ政権の発足、マインバー免許証の運用開始、大阪・関西万博の開催、育児介護休業法等の改正法、高年齢者雇用安定改正法などの雇用に関連する改正法が施行などいうように、世界的なイベントや雇用に関わるルールが改正されます。
さらには、団塊世代の大半が75歳以上になるため、医療・福祉に関する問題と同時に人材不足もより一層深刻化していくことが予想されています。この数年、人材不足が大きな問題となっていますが、この傾向はしばらく続くこととなります。特に、多くの企業がこぞって導入しているAIやロボットですが、それらの知識を持つ人材はどこの企業でも不足している状況にあります。
このように過去の事業環境から状況が変化する時、これまで自社が築き上げてきた強みの逆転現象を引き起こしてしまうことは昨年の事例からも学べることなのではないでしょうか。
2024年の出来事を振り返りつつ、2025年にはこれらの課題にどのように対処していくかが、貴社の未来を大きく左右する鍵となります。
あなたの会社で起こるかもしれないジレンマとは何ですか?