第155号:管理職が壊れ始めた会社で起きている構造的異変

管理職の不調は偶然ではない
最近、あなたの会社の管理職の表情が変わったと感じることはないでしょうか。以前は現場の中心で判断し、部下を導いていた存在が、いまでは疲れ切った顔で報告に追われ、トラブル処理に奔走している管理職はいませんか。欠勤や体調不良、メンタルクリニックの通院が珍しくなくなった企業も増えています。
「業務量が増えたから仕方ない」「最近の管理職は打たれ弱い」と、多くの経営者はこう考えてしまいがちです。しかし、そうした見方が組織の発展を妨げてしまうことに繋がなります。管理職のメンタル不調は個人問題ではありません。
管理職を追い込む組織設計の歪み
労働集約型の業界においては、人手不足と業務高度化が同時に進行しています。売上拡大に合わせて業務は増え続ける一方、採用は思うように進まず、教育の余裕もない。そのしわ寄せは、ほぼ例外なく管理職に集中しています。
現場の穴埋め、クレーム対応、新人育成、数字管理、上層部への報告…と本来ならば複数の役割に分解すべき業務を、管理職一人が抱え込む構造が常態化しています。
さらに問題なのは、責任は重くなる一方で裁量が縮小していることです。承認フローは増え、ルールは細かくなり、判断しても覆される。結果として管理職は責任だけを背負い、組織を動かせない立場に置かれます。こうした状態を個人の問題と捉え、配置換え、休職、面談で乗り切ろうとしてしまうことがあります。
配置換え、休職、個別面談での不満解消、目先の対処だけで済ませて構造的な問題には一切手を付けない。その結果、同じ問題が繰り返されていきます。
管理職は“調整役”として消耗されてきた
管理職が壊れていく会社には、ある共通する構造があります。それは成長の歪みを管理職に吸収させてきた経営モデルです。多くの企業はこれまで、「人を増やして売上を伸ばし、問題が起きれば管理職が調整し、仕組み化より現場対応で乗り切る。」この方法で成長してきました。
管理職が、組織の歪みを吸収するクッション役として機能していました。組織の成長期には、このモデルはうまく回ります。多少の無理も気合と責任感で吸収できるからです。しかし環境が厳しくなり、人が増えなくなった瞬間、この構造は一気に崩壊します。
未解決の業務課題、採用課題、仕組み不足のツケがすべて管理職の負荷として積み上がるからです。メンタル不調とは、管理職の弱さではなく、この経営モデルが限界に達した警告信号なのです。
消耗させるマネジメントから設計するマネジメントへ
この問題を乗り越えている企業は、管理職の使い方そのものを変えています。ポイントは「歪みを吸収させる役割」から「組織を設計する役割」への転換です。まず業務を徹底的に分解し、管理職が抱え込んでいる調整業務を構造化します。
属人的対応をルール・仕組み・分業に置き換えていきます。次に判断権限を現場に戻します。結果責任と裁量をセットで渡し、細かな承認文化を減らします。そしてマネジメント教育を単なる研修ではなく、実務再設計として行います。
業務配分、負荷管理、対話設計、感情マネジメントを組織運営スキルとして体系化するのです。ここで重要なのは、管理職を強くするのではなく、管理職が消耗しない構造を作ることです。
次の成長モデルへの転換点
管理職の疲弊は偶然ではありません。それは会社が「歪みを人で吸収する経営」を続けてきた必然の結果です。これから経営者に求められるのは、誰が弱いかを探すことではなく、どこに歪みが溜まっているかを設計し直すことです。
あなたの会社は、成長の代償を管理職が支払う経営を続けていないでしょうか。

