第6号:成長する会社を率いる社長に共通する壁の乗り越え方
「やっと50名規模の会社になりました。もっと成長させたいけど、この規模を超えることが難しいんです。何人もの先輩経営者に相談し、また、経営にも携わってもらいました。そこである方から、“会社はね、経営者の器以上には成長しないよ”と言われてしまいました。」弊社でコンサルティングを実施している社長が、コンサルティングを受けようと思ったきっかけになった出来事について話していた時のことです。
「僕の関心は、顧客と技術です。大事なことは未来を創ることで、僕にはその力があるという自信もあります。正直なところ、人への興味はあまりありません。だから、社内で起きている社員たちの足の引っ張り合い、権威を振りかざし仲間を傷つける、殺伐とした職場、そういうものに一切気がつきませんでした。それを指摘された時、やっと気がつきました。社員は、僕の背中を見ていると…」
社長は、「人を動かす人」です。自身の言動のすべてが、会社、組織をつくり、社員をつくる。本人が意図しようがしまいが、その振る舞いすべてが、社員たちに大きな影響を与えます。
社長が高圧的で横柄な態度で部下に接していれば、傍若無人な行いがまかり通る会社になる。社長が前向きで活動的にしていれば、明るく活気がある会社になります。社長が暗くつまらなそうにしていれば、覇気がなく投げやりな雰囲気の会社になる。
こうした事実を突きつけられた時、どのように状況を好転させていけるかが、社長の腕の見せ所です。壁にぶつかった際に、成長する会社を率いている社長の乗り越え方には、いくつかの特徴があります。
まず、先輩経営者に悩みを相談し、助言を与えてくれる人を見つけています。そんなの普通でしょうと思うかもしれませんが、成長する会社の社長は、単なる先輩を選びません。言われたら嫌なこと、厳しいことを真正面から指摘してくれる人のそばにいることを選択しています。敢えて手厳しい人の近くにいき、社長自身が気づくことができなかった弱みや欠点と向き合っています。
次に、投げかけられた意見を真摯に受け止める力を持っています。相手が何を伝えようとしているのかを推し量り、理解しようと努める。素直に教わる姿勢から謙虚さが伝わるからこそ、先輩方は厳しさを示すことができます。
社長は、相手から情報を得るよりも、伝えることが多い立場です。相手の話を受け入れ、理解する姿勢を保ち続けなければ、必要な情報すら得られなくなります。そうしたことが身に染みているからこそ、日ごろから表面的なことに反応しない、言葉尻にとらわれない、都合のよいことに飛びつかないように自制心を働かせようと努めています。
最後に、やっていることが間違っていたと認識するなり、素早く軌道修正できる点です。自分のやり方のどこに読み違いがあったのか、見直すべき点はどこか、どのように動かせばいいのかと考えを巡らせ、次の行動を起こしていきます。
それはもちろん、自分が達成したいことや成すべきことを視野に入れていますので、決して、起きている事象を解消することを目的とした改善行動はとりません。目指している方向に進むために、社内外問わずさまざまな人材を巻きこんで新たな活路を見出しています。
踏ん張りどころを乗り越えなければならない時、ただじっくりと解決を待っていても何も変わらないでしょう。会社を成長へと導いていく社長の特徴には、事態を打開していく強さとそれを糧にしていくたくましさがあるように思います。
次の世代を育てる際に、経営的視点ばかりにこだわらず、社長としての器を大きくする観点を取り入れてみてはいかがでしょうか?