第20号:どうして儲からない社長はこうなのか?
コンサルティング中のある社長。人材の資産価値を高める施策を打つための準備を始めようとすると、「いや~、それは難しいですよ。」、「うちの社員たちには無理ですね。」、「だって…」と必ず否定から入るという方がいらっしゃいます。
この社長は、これまでかなり苦労しながら、経営されてきた経緯があります。社員、顧客、取引先などとの関係で、神経を使い、できる限りの手を尽くしてきたけれど、何をやっても効果があまりなかったと言います。そのためか、何をやっても駄目だと決めつけているようです。その一方で、非常にユニークな一面を持ち合わせていました。
それは、「できない」と言い切った数日後に、「作ったので見てほしい」と連絡を入れてくることです。作ったものというのは、確かに人材に関わることではありましたが、予定していた内容とは全く異なるものでした。そこには、「うちの会社がやらないといけないことから始めます。うちの会社とよその会社は違うので…」と社長からの一言が入っていました。
人間ですから、自分のやりやすい方法、考え方、口ぐせのようなものがあるのは当然です。
まさかと思うかもしれませんが、それらが、経営に大きな影響を与えていることを忘れている社長は、実は、大勢いらっしゃいます。
例えば、この社長には、特徴的な2つのパターンが見受けられます。まず、物事を否定的に捉えてしまうということです。誰かの言ったことやしなければならないことに対して、「でも」「分からない」「難しい」などとネガティブな反応をします。何かを成し遂げるためというよりも、やらない・できない理由を探そうとしているかのように映ります。それは、社長自身の行動の範囲や可能性を狭まるばかりでなく、社員たちの挑戦心を奪うと同時に、新たな施策の成功確率を下げかねないものとなります。
もう1つは、「自分オリジナル」を打ち出したいという強いこだわりがあることです。定型的に行えば効率的に対処できるものを、「自分はこうやる!」という色を出したいという欲求に駆られてしまうという点です。経営者ですから、自分の会社を好きにすることは自由なんですが、それが経営上の優位性を発揮することか否かを考えずに、むやみやたらに「自社色」を出しすぎることは時に大きな損失を生み出すことにもつながりかねません。
この社長とは全く関係ありませんが、ここで取り上げた「ネガティブワード」と「オリジナリティ」という2つの言葉から、社長であれば誰にでも持ち合わせている、ある一面が見てくるのではないでしょうか。「うちは違う」、「こんなやり方で上手くできるわけがない」と、見たことや聞いたことがないものは受け入れることができないという固定観念の壁のようなものが立ちはだかっているということです。
それは、自分のやり方や考え方が正しい。だから、それなり成功してきた。そのような思いが強いが故に、考え方が凝り固まってしまい、自分の枠に収まらないものを拒絶していないかと自己点検してみてはいかがでしょうか。
ここ最近、AI技術の進展が話題になっていますが、それらの技術を使ってできること、してみたいこと考えましたか?まさかですが、「うちの業界は、そんな技術とは無縁だよ」とか、「そもそもさ、パソコンとかAIに取って代わるような仕事してない」とか、「何か悪いことが起こりそうだよ」と言って新しいものに触れることを避けていないでしょうか。
自分の経験や常識なんてものは、そんなに後生大事にするものでもないのかもしれないですよ。今まで以上の経験をしてしまったら、きっと、「大したもんじゃないものにすがりついていた」と振り返れる程度のものだと思いますから…。新たな経験を手に入れるために、まずは、儲かる会社になると宣言しましょう!