第40号:変革時代に経営者が持つべき成功への視点

 コロナ過で企業研修をしていた時のことです。世の中の変化について、考えるワークを行っている際に、「社会は、必ず元通りになると思います。上司がそう言っています!」と、社会は絶対に変わらないと信じる社員が語気を強めて語ります。そうかと思えば、「うちの会社でやっと若手にも、光があたる時代がくるんじゃないか」と閉塞感を感じていた社員には、チャンスが来ると軽快な口調で話していました。

 コロナ過で多くの企業が、通常通りに業務を進めることが難しくなり、社員たちは不安や不満といった感情と向き合わなければなりませんでした。いつ終わるか分からない緊急事態に、心がついていかず、上司の言うことを盲目的に信じることで安心を得ている社員たちも相当数いました。

 それとは逆に、状況を冷静に捉え、社会が大きく変化していくことを予測し、明るい未来や新たな可能性を見出している社員たちが少ないながらもいました。20年以上前であれば、「うちの会社には、未来を描ける社員がいるから安泰だ」と喜ぶことができていましたが、近頃は、「先読み出来てしまう社員が退職する」という傾向が強まっています。

 それは、この会社にいても先がないと判断するからなのでしょう。特に、今回のコロナ禍の対応では、「これまで圧倒的な強さを誇っていた会社や部門が、この危機を上手く乗り越えることが出来なかった」と、社員たちには映った場面があったのではないかと思います。

 社内外で強い影響力を発揮していた部門が、コロナ対応に失敗した。スゴいと思っていたものが、無策であることが露呈しました。そのうえ、社員たちに理不尽な要求ばかりを突きつけ、まるで「インパール作戦」かのような事態に陥ってしまった。日本企業にとっては普遍的なテーマかもしれませんが、予想や計画通りにいかなった時の切り替えに苦慮する組織は今でも存在しています。

 さて、本題はここからです。時代が大きく変わろうとしている今、会社や組織を守るためにあなたがすべきことはなんですか。脇を固めますか、まずは自分の利益を確保しますか、「守る」というのは内向きに意識が向かい、利害関係に執着したくなるものです。

 だからこそ、時代の流れに順応できる組織作りを目指すことが賢明なのではないかと考えています。結局のところ、これほどまでに環境や技術がコロコロと変わっていく状況で、社会が変わらないことを前提に物事を考えること自体が難しくなっています。

 ということは、一つ一つの現象や事象が出現する度に、モグラたたきのようなことをしていてもあまり役には立たないということです。今、世間を騒がせている芸能事務所をめぐる企業の対応を見ていると、分かると思いますが、横並びで目立たない施策を打つことではありません。大切なことは、何が本質なのかを見抜くことです。

 自戒の念を込めてお伝えするならば、「世の中に正解はない」ことは皆が知っています。それでは、安直な方法、楽なこと、正解っぽいものを探したくなるのが、「正解がある勉強法」を叩きこまれた私たちの性です。ですから、常に学び続ける、新しいことを学習することが必要となるわけです。

 学ぶことが好きに人にとっては、それ自体が目的化してしまうことが懸念されますが、やるべきは学んだことを通じて、自分の考えや意見で問題を解決していくことです。

 あなたは、大きく時代が変わることを受けて入れますか?それとも、社会は変わらないと抵抗し続けますか?